６８ 目覚めと箝口 薬研side ページ33
現在時刻は午後２３時３０分。
俺達は、大将の目が覚めるまで傍に居ると決め、此処でずっと、交代しながら大将が目覚めるのを待っていた。
何時の間にかメンバーは増え、現在は俺、乱、大和守、加州、和泉守、堀川、五虎退、いち兄の８振りとなっており、俺が大将を診ている間は、他の刀剣達は眠っている。
…大将は、未だ眠っている。倒れた時よりもは快復が進んでいるのか、呼吸は荒くない。汗も出てる訳ではなく、本当に、静かに寝ている様に見えた。
が、すぐにこのフラグは折れる事となる。
「…ん」
「！ 大将、起きたのか…？」
「…ぅ、ん…此処、は…？」
ふと、大将が目を覚ました。
「大将の部屋だ。俺達が大将を此処まで運んだんだ。…おい、皆、大将が起きたぞ」俺は大将に状況説明をしながら、他の刀剣達を起こした。
大将に話をしながら、大将の様子を見る限り、特に変になっている所などは無さそうだ。まだ怠そうにしている為、完全快復、という訳では無いようだが。
大将が起きたのを知った刀剣達は、喜ぶ者、嬉しさに泣く者、起きたばかりの大将の身体を気遣い、水を持ってこようと出て行く者、感動の余り大将に抱きつく者など、個々の反応を見せた。
数分後。漸くほぼ快復した大将は、声を発した。「…否、その…済まなかったな。折角俺の為に準備してくれた誕生日会、最後の最後で駄目にしちまって」
「全然！主が無事ならそれで良かったよ！」
「そうです！ぼくたちはあるじさまが元気なら、それだけで安心できますからね」
「主、謝られるのは好きじゃねぇんだ。誕生日会が主の心に残るなら、オレたちはそれで充分だぜ」
「…本当、お前達には支えられてばっかだな」そう言って大将は微笑むと、何だか切ない顔をした。「如何した大将？」
「あー、いやな。先刻まで俺寝てただろ？その時、昔の本丸の夢を見てさ」
「昔の本丸…ですか」
「そう。まだ俺と、１振りの刀しか居なかった時の本丸の光景があってさ。俺は透明人間みたいに其処に居たんだよ。一寸ばかし幼い頃の俺が走っててさ。姿は見えなかったけど、多分初期刀と話をしてたんだと思う」
「不思議な夢ですね」
「嗚呼。不思議だ。夢ってのは、知ってる奴しか出ない筈なんだがな。声が──」
「あるじさん」大将が夢について詳細に語ろうとした時、不意に乱が遮った。「…ボク、眠いや。今日だけ一緒に寝て良い？」その言葉が本心からじゃ無さそうに聞こえたのは、俺だけだろうか。
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