５ セコム登場 ページ9
「あ、アンタ、ここの本丸に新しく入ったのか？大将は？一緒じゃないのか？」
刀剣はぶるぶると震えて、何一つ喋らない。コミュ障ってやつか？
すると、燭台切が、籠から唯一落ちなかった胡瓜を刀剣に差し出した。
「取り敢えず、これでも食べて落ち着いて？それから話してくれて良いから。僕達が突然現れて吃驚したんだよね」
「…」
燭台切が差し出した胡瓜を、刀剣は手に取り、じっと見つめる。それから、胡瓜を燭台切に、丁寧に返した。
胡瓜は好きじゃねぇのか？
燭台切が胡瓜を籠に戻してトマトを差し出すが、それも断られてしまった。
「何か、食べたい物はある？作ってこようか？」
「…」
刀剣は俯き何も反応を示さない。俺っち達はお手上げで、ただその刀剣を見つめていた。すると、続々と兄弟達が集まってきた。
「あ、薬研いたいたー。ん？誰、その人」
「何やら見知らぬ刀剣男士だな。新入りか？」
「何言っても反応してくれねぇんだよ。困ったモンだ」
「お名前は？刀派は？言えますか？」
毛利がそう声を掛けて漸く刀剣は顔を上げた。然し、突然大勢が話しかけた事に驚いたのだろう。立ち上がり、ゆっくりと後退して逃げようとした。
「あっ、待ってください！」
刀剣に五虎退が歩み寄ると、刀剣は後ろを振り返り走って逃げようとした。
───だが。
「おぉっと、見つけた、淤御国」
「本当！？淤御国見つけた！？」
刀剣の身体は何者かによって退路を阻まれた。そう、加州によってだ。恐らく、大和守と一緒に探していたのだろう。直ぐに大和守もやって来て、「嗚呼、良かった。居なかったら如何しようかと…」と、刀剣をギュッと抱きしめた。
大和守。多分相当心配してたんだと思うが、刀剣が苦しそうにしてるぞ。力入れ過ぎだろ。
「……加州くん。その刀剣君は？」
「…茉莉守淤御国。今日この本丸に新しくやって来た刀剣だよ」
「へぇ。新入りか」
「じゃあ、今日は歓迎会なのですね」
皆が茉莉守を見る。茉莉守の旦那は怖かったのか、大和守の背に隠れてしまった。
おい、大和守昇天しかけてるぞ如何した。
「ヤバ…淤御国が僕の事を盾に隠れるの超可愛い。死ぬ…」
「写メ撮るから死ぬなよ」
「…所で燭台切」
「淤御国泣かせたのはお前？」大和守はそう言い笑んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 38人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
