4 母性? 薬研side ページ8
俺っちは、縁側を歩いていた。
今日も庭で兄弟達が遊んでいる。俺っちも鯰尾兄に誘われて、皆の輪の中に入っていく。
偶にははしゃぐのも楽しいしな。
「次は何で遊ぶんだ?」
「薬研が決めていいよ……」
「骨喰、息切れてるけど大丈夫?」
「俺っちが遊び決めていいのか?」
「いいですよ!」
「んじゃあ……久し振りに隠れんぼでもするか!」
「俺鬼がいい!」
「1人で大丈夫か?」
「おう!」
「それじゃあ、10数えてくださいね!」
包丁が10を数える間に、俺っち達は散り散りに別れて、隠れ場所を探した。
俺っちは野菜畑の方に向かった。すると、運悪く、燭台切とぶつかってしまった。
「あっ、薬研君!御免ね、怪我は無い?」
「あ、嗚呼。俺っちは大丈夫だ。すまねぇな燭台切。野菜が落っちまった」
燭台切が持っていた籠の中には、つい先刻まで大量の野菜が乗っていた。俺っちがぶつかった事で、野菜が地面に落ちてしまったのだ。
「本当だ!薬研君、すまないけど、野菜を拾うのを手伝ってくれないかい?」申し訳なさそうに、燭台切は俺っちに頼んだ。
「元はと言えば俺っちが悪いんだ。勿論拾うぜ」
「有難う。薬研君は何をそんなに急いで走っていたのかな?」
「兄弟達と遊んでたんだよ」野菜を拾いながら俺っちは答えた。「隠れんぼなんだ」
「成程。珍しいね、薬研君が遊ぶなんて。いつも縁側で遊ぶのを眺めてる側なのに」
「偶には遊んだって良いだろ?」
そんな事を話していると、遠くの茂みの方にトマトが転がっているのを見つけた。「彼処のトマト取ってくるな」俺っちは燭台切に一言そう言って、茂みの方へと向かった。
茂みの草に引っ掛かっているトマトを、丁寧に手に入れる。さて、と立ち上がった時、茂みの中に、誰かが隠れているのを見つけた。
兄弟か?と思って、茂みの中を覗くと──
「……」
(見た事ない刀剣だな……)
「おい、そこのアンタ。こんな所で何してるんだ?」
「!」
茂みの中には、大和守と似た様な服装の、見知らぬ刀剣男士がいた。俺っちは迷子になったのか?と思いながら、そいつに聞く。
しかし、その刀剣は突然話しかけられて驚いたのか、ぶるぶると震え出した。
……何だ、この小動物は。
後から来た燭台切も、同じ事を思った。
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