34 食べなかった理由 海翔side ページ43
「淤御国っ!」
淤御国が食事をしてくれたのがよっぽど嬉しかったのか、安定は淤御国の下に駆け寄った。淤御国は突然の安定の登場にびっくりしているのだろう。固まって動かない。
その安定の姿を見て、何かが吹っ切れたのか、他の奴も淤御国に駆け寄った。当然、俺もだ。
「淤御国っ、食べてくれた!」
「やったー!淤御国やったね!」
「お前食えんじゃねぇか!」
「和泉守、そんなに抱きしめると茉莉守折れちまうぜ?」
「……??」
状況が全く理解できない淤御国は、皆をきょろきょろと見回す。それに気づかず、皆は淤御国を取り囲んで抱きついている。
「淤御国、どうしたの?」
「もしかして、今何が起こったのか、理解が追いつかねぇのか?」
「あ、じゃあ一から説明するよ」
そう言って、清光は説明を始めた。
淤御国が栄養失調、睡眠不足で倒れたこと。
皆で淤御国にご飯を食べてもらう作戦を考えたこと。
実行したら、失敗しかけたものの成功したこと。
淤御国は説明を黙って聞いた。聞き終わると、ぺこりと頭を下げた。恐らく、「ご迷惑をおかけしました」ということなのだろう。
「なあ、淤御国。何で今まで飯を食わなかったんだ?それと、寝ることも」
「…」
「茉莉守、喋ってくれねぇとこっちも困るぜ。もう2度と、こんなこと起こしたくねぇんだ」
「そうだよ淤御国。喋って、お願い」
淤御国は皆を見る。誰もが真実を求め、淤御国を見つめていた。俺だって知りたい。淤御国も大切な刀剣の一振りだから。
淤御国が、一度目を閉じて、そして目を開けた。何かを決意したような、真っ直ぐな目だ。
俺、もしかしたら初めて淤御国の声聞くかも。
「……僕は、触れたものを呪ってしまう、周囲にいたものを呪ってしまう、から……」
「?それって、どういうこと────」
堀川がそう言おうとした時だった。堀川は、淤御国の目に恐怖を覚えた。俺もとっさに淤御国の目を見る。
凄く鋭い。まるで、「この件には関わるな」と言っているようだ。
「……煩えよ。俺が怒る前に解散しろ、お前ら」淤御国?は、だるそうに首を支えながら言った。
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