26 もう決まっていること ページ35
「刀剣にも、審神者にも……危険な刀?」
「嗚呼。あの刀は、周囲に存在するモノに悪影響を及ぼす、[呪われた刀]なんだ」
「呪われた……刀……とは?」
江雪の質問に、薙刀は躊躇なく答えた。「[茉莉守淤御国]は呪われているんだよ。その所為で、数々の審神者の身体や行動に異変が起きてるんだ。あの刀が、まだお宅の本丸に居るんなら、直にまた異変が起こることは確実だ。気をつけた方がいい」
「警告どうも。でも僕たちは強いし、あの人がそんな弱いわけが無い。何かあっても、僕たちが主を護る」
「お小夜の言う通りだ。貴様にどうこう言われる筋合いは無い。主はきっと大丈夫だ。それに、彼だって、同じ仲間だ。まあ、貴様の警告は一応聞いておこう。只の杞憂だろうけどな」
「……そうか。お前達の絆は本物なんだな。じゃあ、精々そうならないように祈っておくさ」
「最後に……良いですか……?」去ろうとする薙刀を、江雪が引き止めた。薙刀はこちらを振り向く。「……何だ?」
海翔が江雪を出陣させた理由。それがこれだ。
「貴方は……何故、私たちを倒そうとしず、和睦を、試みたのですか……?どうやら、私たちの知っている遡行群とは……また、違うタイプの、ようですね…」
「……今まで、数多の刀剣に警告をしようと試みた。けれど、どの刀剣も、俺みたいな奴と和睦をしようなんて思う奴はいなかった。まあ、時間遡行群だしな。けれど、やっと……和睦を望む江雪左文字を率いる、部隊が目の前に現れた。だから、チャンスだと思ったんだ」
「何故、私たちが……主の本丸の刀剣だと、見抜いたのですか……?」
「普通に会話を聞いていただけだ。ほらこんのすけ…だっけか?そいつを介しての会話で聞いてたんだ。それに俺、一度こっそり政府に忍び込んで、声とか持ってる刀剣とか?調べてたからさ」
「政府に忍び込んだ……?貴様、一体──」
「とにかく、俺はただ単に[茉莉守淤御国]と戦ってみたいから、警告しただけだ」
歌仙の言葉を遮って、薙刀は去っていく。
山伏が、微妙な空気を遮って言った。「いつの間にか時間遡行群も居らぬことだし、本丸に帰ろうではないか!」「……そうだな、兄弟」
こうして、嵐のように過ぎ去った薙刀。意味深な発言を頭の中で反芻させ、悩みまくる刀剣達。
あの薙刀は何者なのか。その答えをゆくゆく知ることになることを、歌仙達はまだ知らない。
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