17 霧耀渓谷 薬研side ページ21
「はー、やっと着いた。ここが霧耀渓谷ね」
「慣れない場所は緊張するね」
俺達は、新しく追加された場所、霧耀渓谷へと訪れていた。それぞれが思い思いの言葉を口にする。
沖田組と呼ばれている2振りは辺りを見回し、「あ、あそこ!鳥がいる!可愛いなぁ」などと話しながら、まるで観光気分かのようにぶらついている。
土方組と呼ばれている2振りは茉莉守をチラチラと見て、気にしているようだ。
そして、例の茉莉守は、ただボーっとその場に立ち尽くしていた。
俺は側にいるこんのすけに話しかけた。こんのすけは大将の代わりに、この場所を案内してくれるガイドのような立場だ。「なあ、こんのすけ」
「何でしょうか?」
「時間遡行軍とか、検非違使とかは大丈夫なのか?正直さっきからそれが気になって仕方ねぇ」
「それならご安心ください。念の為、主さまが調べてくださいましたが、今のところその気配は全くありません」
「そうか、サンキューな」
「いえ。いつでもご質問ください」
「ねえねえ薬研さん!助けてください!」ふと、俺の耳の中にすっ飛んできたのは、堀川の助けを求める声だった。俺が声のする方に振り向くと、堀川が俺の肩を即座に掴んで揺らしてくる。
「あの2人が勝手に向こうの山の方に行っちゃったんですよ!兼さんもそれに便乗して行っちゃったし……如何しましょう!」
「はぁ、あいつらは……。取り敢えず、追いかけるぞ。こんのすけ、できるだけ安全な道で俺達をあいつらのところまで案内してくれるか?」
「お任せください!」
「こちらから行きましょう!」こんのすけの案内に従い、俺達は、ズンズンと和泉守達の元へ向かう。あ、茉莉守もちゃんといるぜ。
それでも結構険しい山道だった。ここに遡行軍が大量に来たら、さぞかし大変だろうなあ……。なんてことをぼんやりと考える。
「あ、見えました!」数十分後。漸く和泉守達の姿が、うっすらとだが見え始めた。
「いた!兼さーん!」
「大和守安定!加州清光!和泉守兼定!勝手に行動しないでください!」
「そうだぜ。初めて来た場所だし、何があるか判らねぇんだ」
「あっはは。だって、見知らぬ植物がいっぱい有るんだもん」
「ごめんねー」
「国広も見てみろ!珍しい魚だ!」
「もう〜、兼さんってば!」
心なしか嬉しそうだぞ、堀川。
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