１５ 大人だから 一期side ページ19
「こんのおおおおおおおおおおおお！！！」
「首斬るぞおらあああああああああ！！！」
外から聞こえてくるのは、先程主が起こしに行ったあの２人の怒号。それに弟達はびくりと肩を震わせた。
「また鶴丸が何かしでかしたのか」薬研が溜息を吐いて、食事を再開した。それを合図にするかのように、他の弟達も食事を再開する。
「はっはっは。賑やかで良いことよ」
「良いのでしょうか……？」
「いち兄！その漬物貰うよ！」
「ああっ！私の漬物！」
「いち兄、よそ見しちゃダメですよ」
「ああっ！それは私が燭台切殿に頼んで作ってもらった料理！」
「ははっ、不憫だなあいち兄」
その後、３０分程経って漸く主と２人、そして、怒られたはずなのに飄々としている鶴丸殿が来た。
私はふと、昨日新たにきた刀剣のことを考えた。
茉莉守淤御国。乱が自己紹介した時、びっくりしたのか逃げてしまったらしい。それに、他の弟達が近寄った時も、何故か怯えていたそうだ。
茉莉守殿が怯えている原因は判らないが、あの２人とは関われているため、恐らく余程の信頼関係がないと茉莉守殿とは話すことすら真面にできないだろう。
一体、何故なのだろうか。
朝餉が終わり、まだぼんやりと考えている私の隣に、薬研が座った。「どうしたいち兄？」
「嗚呼、いや……何でもないよ」
「それで俺を誤魔化せると思ってるのか？大方、予想はつくぜ。茉莉守の事だろう」
「……よく判ったね」
「そりゃ、兄弟だからな」短刀とは思えないほど低くカッコいい声、と、主が形容する声で、薬研は言う。
そういえば、私は半年程前に漸くこの本丸に顕現されたのだが、その時までは薬研と乱が兄代わりだったらしい。勿論、鯰尾や骨喰も兄らしくいてくれたらしいが。
一番兄として頑張ってくれたのは薬研だと、乱が笑顔で言っていた。
そこまで思考がいって気が付いた。薬研は、この本丸に顕現されてから一度も私に甘えたことがない。
何だか、兄としては少し寂しい。
「そういえば薬研」
「ん？何だ？」
「薬研が私に甘えてくれたこと一度もないけど、私に甘えてくれても良いんだよ？」
「俺は大人だから、別に甘えなくて良い」
「……そうか」
薬研、お兄ちゃんとしては悲しいんだよ！
……こほん。
薬研も、たまには大人の殻を破って良いのにな。
「おーい、お前ら集まれー」
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