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いつも通り、重岡くんとお昼を食べて午後の授業を受ける。
放課後遊ぶのなんて久しぶりな気がするなんて、浮かれていたらふと頭に浮かんだ望の姿。
諦めるって決めたのにな。まだ忘れられない。楽しいことがある度に浮かんでは消え、悲しいことがある度に思い出して胸が苦しくなる。
「Aちゃん、帰ろ！」
ぼんやり外を見て黄昏ていれば、重岡くんはわざわざ教室まで迎えに来てくれた。
「どこ行くの？」
「んー、内緒」
そう言って笑う姿は心なしか寂しそうで。
「何か、あった？」
いつもの笑顔が今日はやけに空元気に見えた。
「まぁ、色々あるんよ。男には」
意味深な言葉に隠された重岡くんの強がりに、私は気付けるはずもなく。
「大変なんだね、じゃあ今日は私が元気付けるよ！」
「…、ありがとう！」
重岡くんがどんなに身を削って私たちを仲直りさせようとしてくれていたのかも、自分の気持ちをどんなに抑えていたのかも。私は何も分かってなかった。
「とーちゃく」
「重岡くん？」
「あ、忘れもんしたみたいやから先降りてて」
「え、でも、私一人じゃ、」
「すぐ来るから」
その言葉が少し引っ掛かって。中へと戻って行った重岡くんを乗せ電車は発車してしまう。
一人でどうすることも出来ないまま、重岡くんを待っていようとホームのベンチに腰掛けようとしたとき、聞こえるはずのない声が聞こえた。
「A、」
こんなところにいるはずないのに。気のせいだと言い聞かしても、続いて聞こえるのは、間違いなく望の声で。
「なぁ、A、無視せんといてや」
隣に腰掛け顔を覗き込まれる。何で。何で望がいるの？
「はな、れて」
「え？」
「もう、会わないって言ったでしょ…？」
心臓の音が聞こえる前に、離れて欲しい。まだ好きだと知られたら、もっと嫌われてしまうから。
「やっぱり、重岡がええの？」
はぁ、と大きく聞こえたため息と共に、また怒ったような、悲しそうな目で私をじっと見つめる。
「付き合ってるってほんまやったんやな」
そう言ったあと立ち上がる望の手を引っ張って呼び止めても、するりと手を離され、帰ろうとしてしまう。
「ねぇ、待ってよ！」
「…重岡が言うてたんや、付き合いだしたから見守ってくれって」
そう言った望はひどく傷付いた顔をして、このままどこかに消えてしまいそうな程悲しそうに笑った。
「お幸せに」
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作者名：七月雪 | 作成日時：2018年6月6日 23時
