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「Aちゃん、お昼一緒に食べよう」
次の日も、いつもと同じように教室まで来てくれる重岡くんに連れられて、空き教室に行く。
「言えた？小瀧にちゃんと自分の気持ち」
優しく問いかけてくれているのに、昨日のことを思い出して泣いてしまいそうになる私を見て、重岡くんはまた悲しそうに笑った。
「ごめんな、泣いてること分かってるのにこんなこと聞いて」
「ううん、全然平気」
「無理せんでええよ、俺の前くらい気抜いてや」
「本当に大丈夫だから、もう誰にも迷惑かけたくないの」
「迷惑なんて思ったことないで」
「…それでも、私が嫌なの」
「、Aちゃんはさ、頑張りすぎなんやないかな」
「頑張りすぎ？」
箸の動きを止めて、真面目な顔をする重岡くんの言葉に、思わず聞き返す。こんな私が頑張りすぎなんて、そんなことあるんだろうか。
「みんなに気遣って、自分だけが悪いって思ってるやろ」
「それは…」
「男からしたらそんなん気にしてへんし、何なら迷惑でも何でも、頼ってくれる方が嬉しいねんで」
重岡くんは、私が周りにもっと甘えればいいと言う。何でもかんでも助けて欲しかったら素直に言うたらええって。
「そんなの、出来ないよ」
「不器用やなぁ、そこは任せとけばええのに。都合のいい時だけアホの振りしといたらええねん」
要領いい方がモテるで？なんてふざけて言っているけど、きっと私を慰めて勇気づけてくれているんだろう。
「そしたら何か変わったのかな」
「んー、変わったかもしれへんね」
都合よく誤魔化して、知らない振りをしていたら、もっと望と一緒にいられたのかな。なんて。
「…なぁ、Aちゃん。明日時間ある？」
「ん？うん」
「じゃあどっか出掛けへん？二人で」
「うん、いいよ」
突然の重岡くんからの誘いには、他に目的があって。この時はまだ、何も知らずにいて。
「明日、楽しみやな」
それがまた重岡くんの優しさだと気付くには、私には少し早すぎたのかもしれない。
重岡くんの考えが分からなくなって、最後に行き着くまでに、悩んで、苦しくなって、また泣くことになるとは思わなかったから。
それも、重岡くんの一言で。
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作者名：七月雪 | 作成日時：2018年6月6日 23時
