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「やっぱり帰ろうかな…」
重岡くんに背中を押され、勢いで家の前まで来たものの、いざ目の前にすると先程まであったはずの決意は、呆気なく砕け散りそうで。
「うん、帰ろう、迷惑かもしれないし」
なんて言い訳をして来た道を戻ろうとした時、見覚えのある姿が見えた。
「望、？」
綺麗な女性と並んで歩いて、何ならものすごい笑顔で、女性のかばんと買い物袋をぶら下げている。
「A…、何でお前、」
あぁ、だめだ。気付かれる前に逃げ出したかったのに、予想外の状況にとっさに対応することも、目を背けることも出来なくて。
「のん、どうしたんこの子。知り合い？」
涙がこぼれ落ちそうなのを必死に堪えては、俯いて、ただ立ち尽くすだけで。
「…何しに来たん、今更。そういうの嫌いやって言うたよな」
大きな溜め息と共に、冷たい声が聞こえてやっぱり来なければ良かったと。本当にもう元に戻すことは出来ないんだと。現実を突き付けられたような気がした。
「ん、ちょっと待って、A、ってもしかしてあのAちゃん？」
でもそんな現実を打ち消すような明るい声に思わず顔を上げれば、どこかで見たような顔と声に、今になって気付く。
「…望のお姉ちゃんの友達、ですか？」
「そう！やっぱりAちゃんやんね？」
「いいから中入るで、姉ちゃん待ってるやろ」
「何言うてんの、女の子一人で帰すわけないやん。あんたが送って行くべきやろ」
「いや、だから、」
「Aちゃん、のんに送ってもらい。もう遅いし危ないから」
半ば強引な友達の言葉に望は反論し続けていたのに、最後は諦めたように私の横に並んだ。
「姉ちゃんに怒られたくないからやから、次来てももう送ったりせえへん」
「うん、ありがとう」
単純なのか、望だからなのか。酷いことを言われたはずなのに、また隣でこうやって歩けるだけで、話が出来るだけで、泣きそうな程に嬉しかった。
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作者名：七月雪 | 作成日時：2018年6月6日 23時
