”家族”はここに居るから【MHA×ワンピース】 (ページ9)

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１０８　アイリside ページ9

あの世界がつまらなかった。

周りに愛想を振りまいていればどうにかなるあの世界が。

唯一面白いと感じたのは、漫画と、二次創作・夢小説。

よく見たのがトラック転生、略してトラ転。
そして、生まれ変わって漫画の中の世界に行って、原作の登場人物と面白そうな人生を送る。

なら私にも出来るだろう。

運転手は老人がいい。前方不注意だったということで怪しまれる事はないだろう。
確実に死ぬように当たりどころにも気をつけて。

視界が暗転して、その後……１分くらい待っただろうか、視界が開けた。

見下ろしてくる見知らぬ顔、それから背景が病室ではないことで確信を持った。

……成功だ。

一週間も過ごしてみればこの世界がどんな世界か分かった。

クロスオーバーだった。

”僕のヒーローアカデミア”の世界に”ＯＮＥＰＩＥＣＥ”の海賊団が入っている世界。

ヒロアカの世界観。
当然”個性”も持って生まれた。内容は”上書き”というものだった。

１人分の人間の記憶を自身のものに書き換えるもの。
記憶が書き換えられる人数に制限は無い。ただ、成り代われるのは１人だけ。
例えば……緑谷出久と爆豪勝己の記憶に共通する１人の人間に自身を上書きさせることは出来るが、緑谷出久と爆豪勝己の２人分に自身を上書きさせる事はできない。

出会った”ＯＮＥＰＩＥＣＥ”の世界の海賊団は”白ひげ海賊団”。
あの漫画の中では１番好きな海賊団だった。

捨て子として拾われて一緒に半年も生きれば、彼らには前世の…海賊だった頃の記憶があり、また誰かを探している事は確実になった。

白ひげ海賊団、１番隊副隊長”チヅル”。

なんて好都合なんだろう！

この世界から彼らに馴染むよりも遥かに簡単に彼らの”家族”になることができる！

この個性もだ、”チヅル”に成り代われと言わんばかりの力を持っている。
どれだけ性格が違おうとも、どうやらこの能力は最初からこの私のような性格だったと思わせる事ができるらしいし。

この世界の私の生みの親は私を捨てたんだし、死んだと偽装する必要も無い。

”チヅル”の代わりの”アイリ”として生きてきた１８年間。
この世界の主人公である緑谷出久が同世代ではなかったのは少し残念だが、今世には白ひげ海賊団の皆が居る。

前世と打って変わって、楽しかった。

楽しかった(・・・)。

原作になかったキャラが、体育祭で一位になってるのを見るまでは。