”家族”はここに居るから【MHA×ワンピース】 (ページ15)

今日:213 hit、昨日:320 hit、合計:18,036 hit

１１４ページ15

あれは……１０、いや９年前か。

まだ、生みの親の家に居た時。

親はプロヒーローというやつだった。
どちらの能力も引き継がなかった自分は、両親のどちらも相手が浮気をしたと考えたらしく。腹と背にある生まれつきの痣も相まった…のかは分からないけれど、父親からは毎日のストレス発散に使われ、母親はお前のせいでお前のせいでとこれまた殴られていた。
…まァ、どこにでもあるような話。

前世の記憶はその時にはもうあったとはいえ、その時のまだ肉体は５、６歳。自立なんてのはできなかった。

血の繋がった”かぞく”が、息子が居てもプラスになることは何もないと気づいたのは冬だった。

真冬。
家を追い出された。

雪が降る中、とりあえず雪の降っていないところに行こうと近くの高架下に行った。
体はこれから小学生になろうかという歳。仕事なんて当然できないし、行く宛もなかった。

オヤジ達家族を…ああ、今はもう家族じゃなかったな。…………かぞくを見つける前にこれは死ぬかな、と思った。まァ死んだら死んだでもしかしたら元の大海賊時代に戻れるかもなとあまり重く考えていなかったが。

白い息を吐いて、眠くなったから寝ようとした。

「おや……子供がこんなところでどうしたんだい？」
「…？」

ほとんど落ちかけていた意識を持ち上げて、見えたのは、傘を差している男の人だった。
黒い服で分かりにくいが、返り血を浴びた跡のある服を来ている男が。

あーーこいつァやべェやつだ、が第一印象だった。

「靴も履いてないじゃないか。これを履きな」
「…………」

…そりゃ、靴も履く前に蹴り飛ばされて追い出されたから。

どこからか出してきた靴を自分の前に置いてくる。
うさんくさい男だな、が次の印象。

ただ、周りと……他の人と違って、目をそらすことはしなかった。

ここに居なくてはいけない理由もないし、売られても売られた先で生きていく自信くらいはあったから、「おいで」と差し出された手を握って、ついていくことにした。

まさか売られる事もなく、ちょっと年上の人と暮らす事になるとは思ってなかったけど。

　

　

　

「弔。残されたのは僕たちだけだ。

進まないといけないんだよ。立ち止まってる暇も、思考を止めてる暇もない。

常に冷静に、次を考えないと」

焦点が合っていなかった目が、ふと自分の事を見た。

「……お前は、どこにも行かないよな？」
「うん、きっと」