君に負けたい【d!】

俺だけのヒーロー【sha】 ページ29

ヒーローになりたい。

そう思ったことがない…と言えば嘘になる。
男の子であれば1度は憧れるのではないだろうか。

なんであれ人生で1度はなにかに憧れるのは至って普通の事だと思う。

困っている人がいれば駆けつけ守ってくれるかっこいいヒーロー。

……しかし、そんな人が本当に実在するのだろうか？

｢ふふ、それが存在しちゃうんだよなー！！｣
『？……しゃおちゃんどうしたん？』

こてん、と首をかしげ不思議そうにこちらを見つめているのがA。
そして、俺のヒーローである。

一見すれば至って普通のかわいい女の子。
どちらかと言えばヒロインという言葉が似合いそうな可愛らしい容姿をしている。

｢はぁ……見た目詐欺やん……勘弁して。｣
『なにそれ、悪口？』
｢……褒め言葉？｣

心底意味がわからない……という顔をしている。

しかし、本当にそうなんだ！
どうみたってか弱い女の子にしか見えないやろ！ロールキャベツ女子も大概してくれ！

『しゃおちゃんは見た目通りって感じやね。』
｢むぅ……なんやそれ、なんかええ気はせんな。｣
『褒め言葉！』
｢あ！俺の言葉やんけ、ぱくんな！｣

『ふふ、はいはい……そろそろ行くよ？』

そういい、少し強引に手を引くA。
その姿はまるで少女漫画の男主人公のようにリードする。

……こういう所やんな。

満更でもない顔で俺もリードされる。
こういうのも、悪くない。




俺のただの片想いで、相手はきっと幼なじみとしか見ていない。
それでもいい、隣でいられるなら。

なんて湿っぽいことを思いながらAについて行っていると……

｢……いったァ！｣

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