伍拾陸 ページ14
鳴｢黒雨殿！そちらに行きましたぞ！｣
｢…ん、了解っと…｣
進み続けること小一時間。ほかの戦場よりも少し出現率というか、遡行軍と鉢合わせる確率が高い平野をひたすら歩く。
敵を屠っては進み、資材を拾い。淀んだ空気のせいか心做しか皆の顔色も悪いし疲労の色も濃い。
けれど進まなければならない。
遠征は出陣とは違うというのはこういう事かと、今になって伴う実感と共に考える。
｢…ここは僕がやっておくから。休んでいて｣
刃をヒュッと横薙ぎに振ってついた血を散らし、思わずと言った様子で座り込んだ鳴狐に声をかける。
鳴｢……ごめん。ありがとう。｣
｢…いいえー｣
他の面々も自分に向かってきた遡行軍を倒し終わるとその場に腰を落とす。
当然だ。今まで殆ど休み無しの戦いだったんだから。
歌｢流石に疲れたね…地べたに座るなんて雅じゃないけど、これもやむなし｣
後｢Aはすげーな！空気は気持ち悪ぃし疲れたしで俺もうへとへとだ｣
｢…慣れてるから…｣
御｢喉乾いたーー｣
江｢先程、貴方が飲んでいた水で最後です…｣
地面に大の字に寝転ぶ御手杵の言葉に江雪左文字が水はもうない、と落ち着いた表情で返す。御手杵の喉から悲痛な叫びがあがった。
あ、そうだ……。
そんな彼のそばにしゃがみこんで、腰に携帯されている水筒を抜き取る。
｢…僕…水汲んでくるよ…近くに川がある…｣
地形があの頃のままならば、ある筈だから。喉乾いたままで戦うと凄く苦しくなるしね。
歌｢けれど君も動きっぱなしじゃないか。休むべきだ。後で皆で行った方がいいんじゃないかい？｣
僕の申し出を聞くが、心配そうな表情で僕を見る歌仙兼定。
嬉々として自分の分の水筒を渡そうとしていた後藤が固まるのか視界の端に見えた。
｢…ん、帰ってきたら休むから。僕は大丈夫…｣
うん。とできるだけ力強く見えるように頷いてみせる。だから後藤、そんなに申し訳なさそうな顔をしなくてもいいんだよ…。
歌｢…そうかい？ならお願いしようかな｣
｢任せて｣
お願いします、と次々に渡される水筒を受け取り、じゃあ行くかと立ち上がる。
江｢危険ですので、早めに帰ってきて来るのですよ…｣
｢……うん、…｣
5つの水筒を抱え、すぐ近くの森にガサガサ立ち入った。随分と鬱屈とした森だ。平野に漂っていた空気とは比べ物にならないほど気分が悪くなる。
｢…慣れててよかった…｣
さて。
まずは水汲みだ。
続く
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音琥(プロフ) - 面白いです！！！あの、よければ、何ですが・・・僕が書いてる作品に、アドバイスとかいただけないでしょうか、（） (2019年8月22日 16時) (
レス) id: 13c9a9eef6 (このIDを非表示/違反報告)
苺花 - スッゴく！おもしろいです！これからも楽しみにしています！お体にお気をつけて更新頑張ってください！(*'▽'*) (2017年11月8日 17時) (レス) id: 874c46c86b (このIDを非表示/違反報告)
ぬこ - 質問なんですが、５３話の後藤十四郎は後藤藤四郎じゃないですか？？？ (2017年4月4日 15時) (レス) id: 2ee3afae63 (このIDを非表示/違反報告)
たいやき。 - どうも！何周もしてる暇なやつです(｀・ω・´)何周しても、面白すぎです。ショタじゃなくてすんませんが、応援してますよー！ (2017年3月21日 20時) (レス) id: c11d58bfc8 (このIDを非表示/違反報告)
サキ(プロフ) - ありがとうございます！更新されてて嬉しいです！ (2017年3月11日 20時) (レス) id: b86fcfd3c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ムラビトJ | 作成日時：2016年4月15日 14時
