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Aを好きになったのは大学１年になってすぐのこと。
家が嫌いで大学入ったら一人暮らししたくて、高校時代ドトールでバイトを沢山してお金を貯めていたので卒業と同時に家を出た。
ちゃんと望む通り国立難関大学入ったこともあり、親は許してくれた。
自炊とかも1通りできたのだが、もちろんめんどくさい日もある。
そんな日はカレーが好きなこともあり、このマンションから徒歩5分の所にあるココイチに通ってた。
月に何度か不定期に通うココイチ。
その時は店員になんて興味無かった。
そしてある日の月曜日。
とても理不尽なクレームをつけてる客がいた。
「ここのカレースプーンは口当たりが悪い！」
いや、そんなの知らねぇよ……。
店員さんは泣きそうになっていた。
助言を入れようか悩んだその時だった。
「お客様！！！！」
突然奥から飛び出してきた女の子。
あの子がどんな対応をするのか、という好奇心が勝った。
とりあえず俺は席について事を見守ることに。
その店員は理不尽な客の前に立つと一言言った。
「ご希望のスプーンでなく申し訳ございません。ではお客様のご要望されるスプーンのメーカーを教えて頂いてもよろしいでしょうか？」
ベク「ﾌﾞｯ」
思わず吹き出してしまった。
……大丈夫バレてない。
なんだあの対応は。おかしいだろ。
スプーンのメーカーなんてスラスラ口に出てくる人いねーよ！
今思うと、無自覚って怖いと思う。
もちろん客は答えるわけもなく顔を真っ赤にして千円札を叩きつけて出て行った。
しかも笑顔で「お釣り忘れてますよー！」なんて言ってるし。
そりゃ沢山の客の前でスプーンのクレームつけときながら、答えられないとか面白いだろ。恥だよな。
その店員は店内の客を一瞥すると「お騒がせしました！」と言ってﾍﾟｺｯっと頭を下げる。
……なんだよ。あれ。
面白すぎる。最高。
とにかく俺にとってそれは斬新だった。
会計をする時に見た名前。
Aさん……かぁ。
顔もそれとなく可愛い。
興味を惹かれた。
次の週の木曜日、俺はまた店に行った。
でも彼女はいなかった。
まさか今日シフトじゃない？
そこからは長期戦だった。
俺は３週間連続毎日カレーを食べたのだ。
そして水曜日には毎日いて、それ以外の日は不定期ということがわかった。
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