つれない彼女の愛しかた (ページ10)

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"じゅったんと喋る？"

突然のことに、心臓がバクバクして、つい手元のクッションを握りしめる。

なんて言おう。

元気？いま何してんの？お疲れさま？

それとも＿＿＿好、

「あ、そう？じゃねー」

は？

「……ちーかね、電話は？」

「あー、その、いいってさ」

仕事中なのでって。マジメだよなー。

そう言って笑うちーかねを見て、急に力が抜けた。

「マジなんだよー。俺の純情をもてあそぶなよなー」

でも多分、落ち込んだ反面、ホッとした。

まだ "言わなくていいんだ" って。

臆病だなぁ、俺。

クッションに頭をグリグリやってると、ちーかねがビールを片手に俺の隣に座って言った。

「でも鴨狩がさ、"チューリップの花言葉って、兼近さん知ってます？"って聞いてきた。それって、アイツは意味知ってるってことだろ」

ちーかねがプルタブを開けた缶を俺の肩に軽くぶつけた。

それを受け取ると、意外なほどの冷たさに、思ってたより自分の体が火照ってるのに気づかされた。

「おまえ、案外脈あるんじゃね？」

「そー思う？」

流し込んだビールは冷たくて、苦いはずなのにいつもより甘く感じた。

ああ、これだから、おまえを目で追うのをやめられないんだよ。

'

俺と彼女は正反対。

性格、見た目、生き方、考え方や価値観だって正反対で、彼女といるとピアスもおちおち開けられない。

だけど、面倒くさいのはお互い一緒で、今では彼女もこう言ってるらしい。

『なんで樹くんと恋愛してるのか？

んー、それはね、

＿＿＿＿言ーわない』

これは、俺と彼女が付き合う前、今から1年前のお話。

今では、ちーかねに笑い話にされてるけどね。

『青紫のチューリップ』【田中樹】

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿完。