つれない彼女の愛しかた (ページ14)

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＿＿＿＿＿2005年

その日は、雪が降る寒い日だったのをよく覚えている。

冬の北海道は予想以上に大雪で、3月といえど、侮れる気候ではなかった。

(ああ、やっぱり来るんじゃなかったかもしれない)

地味な紺のジャケットにまたしても地味な銀色のフレームの眼鏡の地味なおじさんが窓の外(正確には降り積もった雪だが)を見てため息をついたのだから、さぞかし目立っただろう。

しかし、時計を見れば次の予定の時間まであと5時間。今から出発したとしても、ギリギリの時間だ。

仕方ない、とソファを立ち上がりエントランスまで進むが、見慣れない大雪に足は止まった。

その時だった。

「あの、よかったら乗ってきますか？」

「は、」

強い訛りのある問いかけに、一瞬マヌケな声が出た。

振り向くと、艶やかな黒髪が目に入る。

三十を超えるかどうかの若い女性だった。

「ああ、……はい？」

つい聞き返すと、慣れたもんだとでも言うように彼女は笑って言った。

「車で来てるんです。送りますよ」

その後ろには、暖かそうなニット帽を耳までかぶった小さな女の子がまんまるな目で僕を見上げていて。

その姿を見たら、なぜか頷いていた。