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＿＿＿＿＿2024年 6月
「結局ハトってさ、なんでジャニーズ入ったのかな」
"ハト"＿＿＿＿それが彼女の呼び名だった。
事務所の紅一点であった
そして、それ以来俺らの前に姿を見せることなくこの世を去った。
滝沢くんからは、飛行機事故だったと聞いているけど、正直まだ実感はない。
故郷である青森に帰る時のことだったそうだ。
実感はない。そんなものは欲しくもない。
それでも俺らは、徐々にハトがいないことを感じる機会が増えて、それと比例してメンバー全員で集まる楽屋から会話が消えていった。
「結局ハトってさ、なんでジャニーズ入ったのかな」
そんな中で不意に�眞呂�呟いたもんだから、誰も聞き逃さなかったと思う。
ただ、聞き逃さなかったけど、答えられなかったのも本当だ。
それを知ってか知らずか、�眞呂和海韻拭�
「スカウトなのは知ってるけどさ、有名……というか」
「うん」
北斗が頷いたのを見て、「でも」と�眞呂�思い切ったように俺らを見据える。
「逆に言うと、その先を知らないじゃん。俺ら」
"
ジャニーズ事務所に所属しているなら、誰でも知っている情報だ。
だけど、
「きょもは？」
「俺は……」
俺も実は、"それ以上は何も知らない"。
小さな手でぎゅっと俺の手を握る感触に、俯いて我慢する癖。
人見知りで恥ずかしがり屋のくせに人一倍気が強くておせっかいな性格。
ジャニーさんに手を引かれて来た、白くて小さな女の子。
雪国からやって来た、俺のかわいい妹のような女の子。
柚季といた17年間、柚季の考えてることはなんでも分かってたつもりだけど、いなくなった今となっては案外知らないことの方が多いのかもしれない。
だけど俺は、
「ハトの口癖はさ、"辞めたい" だったんだよね」
それでも俺は、誰よりも羽東柚季のことを知ってるって、それくらいの見栄は張ってもいいかな。
'
"ハト"＿＿そう呼ぶ相手はもういない。
"バカ" と揶揄されて付けられた呼び名だけど、羽東柚季は、それには似合わないほど美しくて聡明で。
＿＿＿＿実は誰も、彼女の本質を知らなかったように思う。
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