【東方Project】～少女の幻想郷見聞録～ (ページ6)

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序章　非日常ハ突然ニ　～Ⅴ～ページ6

【おい、小娘。我の中で眠るな…】
何か聞こえる。しゃがれた老人のような声が、今にも消えそうな声で語りかけてくる。
『…。』
寝たい。とにかく起きたくない。
もう全力で忘れかけたあの理解不能な物体を忘れるためにはもう少し寝ないと…。

【とっとと起きろと言っておろうがこの人間風情が!!!我の中にいるというだけで不愉快だッッッ
!!!!】

突然の咆哮。これには、図太い私もさすがに飛び起きた。さっきまで消えそうな声だったのに何だこの声!?
目をあけて周りを見渡せば、
黒、黒、闇。

光がどこにも無い。

何も、見えない。

『…おいジジィ。もしかしてアンタご神木様か？』
可能性なんて、それしか考えられない。
最後の記憶はご神木様の根に包まれたときだったし。
【神様とわかっているならジジィと呼ぶのではないのだよ、人間風情が。】
吐き捨てるような声に、いらっと来る。
『…さっきから、人間風情人間風情うっせぇよ。なに、人間が嫌いなわけ？』
【当たり前だ、なぜあんな下等生物がこの世を支配しているのか理解できん。】

その言葉で、この木は最悪で醜悪な人間と、その人間の治める腐った社会が嫌いなのかと理解する。理解できてしまえば、そんなことかと思わず笑いがこぼれる。

『それはそれは。俺も同じ考えだよ。
　 ―俺はこんな世界大ッ嫌いだ。今すぐにでも、壊れてしまえばいい。』

そして、いわゆる“そんなこと”を理解どころか同調できてしまう自分は
つくづく社会不適合者だと、自嘲の笑みがあふれてくる。

【―ところで小娘。貴様は、ここではない世界へ行きたいとは思わんか？】
『はぁ!?』
そりゃ、別の世界にいけるのならば行きたいに決まってる。
その世界も腐ってなければ、だけど。

【案ずるな。お前が嫌う腐った世界ではない。きっとお主なら気に入る。
我は貴様が気に入った。
おまえは人間風情だが、その中でもまだ分かり合える……気がする。】
【今の人間は、今の世をおかしいと思わないし、思えない。
小娘はこんな世界大嫌いなのだろ？つまり、この世界から違和感を見出しているということだ。】
【お前は、この世界にいるべきじゃない。それに、ほかのものとは違う力を持ってる。いつ迫害され始めてもおかしくない。いや、すでにされてるのか？】
【ともかく、おまえをこの世界から連れ出したい。どうだ？】

夢見心地でうなずけば、突然の浮遊感。
私はどこまでも、落ちていった。