ソファの上 ページ14
さっきまで酔ってて甘えた様子の玉森さんは今は普通に見える。
隣に座って来た玉森さんは下を向いている私の方をずっと見てくる。
さっきまでの立場とは一瞬で逆になった。
今、玉森さんが優位にたっているのは恋愛下手な私でも分かった。
(玉森)「ねぇ、もっと寄って座っていい？」
自分はさっき玉森さんを振ったくせに図々しいと思いながらも、首を縦に振った。
すると、ほんとに肩と肩が当たるくらいに擦り寄ってきた。
私の胸の鼓動が玉森さんにも聞こえるのではないかと思うくらいに近かった。
こんなに近いのに、玉森さんは私の方を見て少し照れた顔でこう言った。
(玉森)「さっき、俺の事好きって言ってくれたよね？
あれ、嘘だとしても嬉しかった。
今、ここにいてくれることも。
俺と手を繋ぐの嫌じゃなかったなら、今も繋いでくれる？」
玉森さんらしい、優しく包み込むような暖かな声でそう言った。
そして、玉森さんの手を握ってあげたい、ではなく、玉森さんの手を握りたい自分がいた。
でも、私はこの手を繋ぐ＝告白をOKするの意味のような気がして一瞬躊躇った。
玉森さんは私の気持ちがどこにあるのか探ってるんじゃないのか、自分に少しでも気持ちがあるのなら一緒にいるという選択肢を選ばせようとしているのではないか、そう思った。
その玉森さんの想いが逆に私には辛くて仕方なかった。
好きだけど、素直になれない自分。
好きなのに、一緒にいちゃいけないと思ってしまう自分。
玉森さんは何も悪くないのに、私のために悩んで苦しんでる。
そう思うと涙が出てきた。
あまり人前では泣きたくないタイプなのに、何故か涙が止まらなかった。
こんなに自分がコントロール出来なくなったのは初めてだった。
(玉森)「ごめん、どうした？
嫌だった？ほんとにごめん。
…えっ、どうしよ。」
「いや、違うんです！ごめんなさい。
こんなつもりじゃなくて…。
大丈夫です。全部私が悪いんです。」
(玉森)「えっ、何が？
いや、でも、泣いてるよね…？
嫌だったよね。ごめん。」
私は玉森さんに伝えたいことをちゃんと伝えられずに色々と勘違いされてしまっていた。
だから、もう私は言葉では伝えられないと思い、精一杯の想いを直接玉森さんに届けることにした。
【これが、最初で最後のチャンスだもんね！これっきり、もう2人では合わないから。後悔のないように伝えなきゃ。】
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作者名：かなた | 作成日時：2019年7月26日 22時
