ケモノである私は今日も奮闘する。１【怪物事変】 (ページ50)

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第四十九話「合理的判断」ページ50

薄暗い下水道(仮)の中を歩いて行く。

アキラくんは怖いのか、夏羽くんの後ろにつき服を掴んでいた。あ、あざと可愛い。

「暗い……臭い……こわい……もうやだ……」

「まずは隠神さんの言っていた先住民というのを探そう」

「だねえ」

「言葉が通じるかな。友好的に解決できるといいけど」

「え、ゆ……友好……？なかよくするの？ここの……その……」

「流石にそれは難しいかもなあ。なんせ相手は立ち寄った人間全て、問答無用で肉片まで余すことなくペロリと食べちゃうヤツらだし」

しかも友好的にさせるんなら私の“刀”は確実にアウトだ。

私の言葉にアキラくんの顔が青く染まった。おっと、無駄に怖がらせてしまった。誠にすまん。

狭い道を先頭は夏羽くん、その次にアキラくん、最後尾を私が歩く。必殺アキラくん絶対守るぜフォーメーションである。自分にネーミングセンスの欠片も無いことを今知った。

すると突然上からナマコのようなものが落ちてきて、運の悪いことにアキラくんの肩に着地した。思い切り悲鳴を上げようとしたアキラくんの口を素早く夏羽くんが押さえる。ナイスだ夏羽くん。
ついでにナマコ(仮)は私が手で払っておいた。落ちた時の「ベチャッ」て音が不快でしょうがない。

「晶、がまんして。大きな声を出すと生き物たちを刺激してしまうかも。びっくりして襲ってくるかもしれない。野生の生き物は基本的にこちらが何もしなければおとなしい。怪物も同じかどうかはわからないけど、大丈夫」

「ほ、ホント……？」

「本当」

「す、すごいかじられてるけど……」

そう言う夏羽くんの頭には3匹のナマコ(仮)が引っ付いていた。しかもアキラくんの言う通りガジガジ噛んでいる。衛生面とか真面目にヤバそうだが多分夏羽くんだったら病気とかもかからなさそう。

夏羽くんは「問題ない」と頭に引っ付くナマコ(仮)を手で引き剥がすと、ポイッとその辺に放った。その様子を見たアキラくんはビックリしている。

「ご、ゴキブリの時もそうだったけど夏羽クン、虫とか殺さないで逃がすんだね」

「やむをえない時以外は殺さない。殺す時は殺す。むこうもそのつもりで襲ってきているからお互いさまだと思うようにしている」

非常に合理的な事を言う夏羽くん。あれか、「殺す覚悟に殺される覚悟」ってやつか。確かにその通りだ、割り切ってやらなきゃこっちが殺されるだけだもんね。