ケモノである私は今日も奮闘する。１【怪物事変】 (ページ44)

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第四十三話「恋愛」ページ44

「き、キミと出会うまでぼくは、何もない人間でした。興味のあることも、友達もいなくて……ずっとひとりぼっちで。毎日、ただ息をして動いてるだけ……ロボットみたいだった………」

彼の言葉に、何故か夏羽くんが反応したのを感じ取った。

「まおちゃんは初めてできたぼくの、光なんです」

そう言うと、依頼人は伏せていた顔を上げて真っ直ぐとネコを見た。
ネコ……『マオちゃん』は驚いたような顔をしていた。

「ぼくを猫にしてください。ぼくはキミのために生きたい。
人間の生活に、未練はないです」

ネコは何も返さない。ただ依頼人の目を見つめるだけだった。
……ものすごく今更だが完全に2人だけの空気だな。

シキくんが空気を読んで「おい、もう行こうぜ」と私たちの腕を引っ張る。
少女はその場にネコを降ろし、用は済んだとばかりにさっさと歩いて行くのが見えた。歪む視界の中で。

「……なんでお前泣いてんの？」

「分からん、分からんけど、なんかビックリするくらい泣けてくる……何でだろ、前にアキラくんに似たような内容のめちゃくちゃ感動した漫画読ませてもらったからかな？」

「感情移入しすぎだろ……」

「普通に引くわ」とシキくんが言うが、こちらとしては勝手に引いてくれといった感じである。

あとはあの2人に任せる形で、私たちは事務所への帰路を歩いていた。「人面ネコたちのこともあるし、とりあえず報告しねーとな」というシキくんの言葉で、そういやそんなのもあったなと今思い出した。

そんな中、後ろを黙って歩いてた少女が私と夏羽くんを見ながら「紺は夏羽かAの首を手にするまで帰らないぞ」と言うと、シキくんは「う、そーだった ……」とメンドくさそうな顔をした。

「どーするつもりなんだ隠神さん…」

「もうこの調子だと諦めるしかないよね」

「何人事みてーに言ってんだよ！お前の首も狙われてんだぞ」

「何回も言うけど、完全なるあの子の勘違いじゃん。多分私の首を持ってったところで「ふーん」で終わると思うよ！……ってことを彼女に言ってやってよシキくん」

「なんで俺なんだよ！お前が言えっての」

「ええ……」

後ろをチラリと見ると、若干睨みつけてるような目で私を見ていた少女。ハイ無理ー！！

そしてその時、初めて夏羽くんがいなくなってることに気付いた。