第三十九話「ネコ」 ページ40
おじさんは今回の相談にやる気を見せる夏羽くんに任せることにしたようで、サポート役にシキくんとアキラくん、そして何故か報酬(夏羽くんの首)で少女を釣って彼らを手伝うように言っていた。
「夏羽くん、チョコ食べる?」
「ちょこ……?」
「そう、チョコレート。とっても甘くて美味いんだよ」
「じゃあ、一つ貰う」
「Aも頼んだぜ」
「はぁい。どうよ夏羽くん、美味し………おじさん今なんか言った?」
「頼んだぜ」
「……????ちょ、ちょっと待っておじさん!!」
俊敏な動きで椅子から降り、これまた俊敏な動きでおじさんがいるカウンター裏へ移動する。
そして彼のズボンを引っ張り、「何だよ」とあからさまにメンドくさそうな顔をしているおじさんを強引にしゃがませる。オルァ耳出せ耳!
「今回の依頼は夏羽くんが担当するんだよね?」
「そうだな」
「この依頼を通して彼に“恋”について学ばせるために、丁度いたあの少女を連れて一緒に行かせるんだよね?」
「そうだな」
「私要らなくね?」
「いや、要る」
「なんで?要らないでしょ。人数多過ぎじゃん?」
「そもそもこいつらの世話担当だろお前は」
「そ、そりゃまあ……子供達の中では年長者だし……」
「決まりだな。お客さんお客さん、こいつらでよければおたくの恋路を格安で応援させてもらうがどうだい?」
「……は?逃げる?というか子供じゃん……まずいよ」
私たちの小声の会話に首を傾げていたものの、依頼人である夜野さんはすでに準備ができた様子の夏羽くんたちを見てそうこぼす。
多少渋ってたものの、彼はまあいいやと自分の電話番号と明日の待ち合わせ場所をメモに書いた。
だがその直後、何かに反応したらしく弾かれたように椅子から降り消えた。……消えた?
おじさんから離れ、様子を見てみる。依頼人はどうやらカウンター下に隠れていた野良ネズミに飛び付いたようだった。ネズミと戯れるその顔は人間ではなく、最早猫のような顔をしていた。……は?
しかもそれを仕舞おうとしたのか、持っていたショルダーバッグから大量のネズミの死体が見えた時は「サイコパスなドラえ○んかよ」と思った。決して口には出さないけど。
おじさんが言うには“猫又”の仕業らしい。これまた面倒なものに取り憑かれてんなあ、なんて思ったところで、私も同じくらい面倒なものに取り憑かれてるということに気付きシンパシーを感じた。刀憑きより猫憑きの方が可愛げがある気がする。
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あさり(プロフ) - 夢小説特有の面白みもありつつ、しっかりと原作沿いにも成っていてこれは良作 (2020年7月16日 15時) (レス) id: 32331818c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nny。 x他1人 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年7月13日 18時