ケモノである私は今日も奮闘する。１【怪物事変】 (ページ36)

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第三十五話「健闘」ページ36

夏羽くんの頭部と彼女の身体が地面に転がる。2人とも血で真っ赤に染まっている。

シキくんは夏羽くんの元に駆け寄って行く。私はアキラくんの身体を背負い、2人の元に向かった。

「血塗れだな夏羽くん。気分とか悪くなってない？」

「いや、特には」

「とにかく帰るぞ！アイツのマボロシが解けたっぽいから、今なら逃げれる」

「せやな。早よ帰ろ」

「2人とも、ちょっと待って」

「織、少し離れて」と夏羽くんが言い、地に頭部が置かれたと思えば彼の首元から炎が現れ、みるみるうちに骨やら肉やらが再生されていく。なるほど、これが彼の「再生能力」。

当たり前だけど素っ裸だな。気付いたらしいシキくんが上半身が再生された所あたりから私の前に立って視界を遮っていた。
シキくんは上着を脱いで彼に投げつける。そうしてもらえるとこちらとしては凄く助かります。

「……なんで、なんでお前はそう、俺がぜってームリって思った事をやっちまうんだよ。
あ～～～もうホントやんなる！俺がビビりなやつみてーじゃん！」

「いや、割と君も猪突猛進みはあるぜ」

「ねーよ！少なくともお前よりはな！！お前らが異常なんだよ、言っとくが俺はアレだぜ、現実見てて冷静なだけだからな！ぜってーお前らに影響とかされないから！」

「ああ。織が冷静だと俺も助かる」

「だろ？」

「(おおう、友情……！)」

水を差しては悪いので黙ったままだが、密かに感動しながら彼らの様子を眺める(背負ったアキラくんは未だ目覚める様子はない)。

そしてシキくんが拳を突き出し、「ほら、コブシ出せよ。仲間はこーやって勝利を祝い合うんだ」と夏羽くん(シキくんの上着を腰に巻いた)に教えていたが、初めて見たらしい夏羽くんはシキくんの拳の上に手を置いていた。違う。

「そうじゃねーよ！こーやって拳を合わせんだよ、おいちょっと来いA！」

「何だいもう仲間割れかい」

「違えよ手本見せてやるだけだコイツに」

「はいはい」

「ナイスファイト」と言いながら、彼の拳に軽く小突くように合わせる。ふむ、割と大きいな彼の手。

理解したらしい夏羽くんが今度こそシキくんと拳を合わせていた。男同士の友情はこれだねと思ってた矢先、夏羽くんがこっちを向いて、拳を向けてきた。

「A」

「え？ああ、はいはい」

私にもやってくれるのか。
同じように彼の拳に自分の拳を合わせ、ニヤリと笑った。