第十五話「秘密」 ページ16
おじさんは、少年に向き合うように振り向いたと同時に、いつの間に握られていたのか銃を構えた。
真っ直ぐと、少年の方に銃口を向けて。
それを目の前で見ている私。
唐突な出来事に状況が全く掴めない。というか、掴めなくとも確実にヤバイ状態だって事は分かる。
「お、おじさん?そんなの仕事の内にあった?」
戸惑いつつ、スラリと手から抜き出した刀を構えてそう問いかけた。
今回はあの「動物の死体」の件だけだった筈。なのに、何故少年を?
「黙ってて悪かったな。聞け、A。そして泥田坊。本当はな、俺は________泥田坊、お前を殺せと依頼されて来たんだ」
おじさんの言葉に、思わず目を見開く。
もしかして、前におじさんが問いかけてきたのは……
「依頼人は女将さん。女将さんはな、お前の正体を知っていたんだよ。女将の姉__お前の母さんからお前を預かった時聞いたらしい。
周りにはずっと黙っていたが、今回こういう事件があって、秘密裏にお前を殺すことに決めたそうだ。ま、実際は真犯人は別にいたわけだけど、弥太郎がこれじゃあな。言っても信じないだろうし。何より都合がいい」
無表情で言い放つおじさんからは何の気持ちも読み取れない。
それでも私はおじさんに向けて刀を構えた。
銃程度、私ならば難無く凌げる。
「少年、私の後ろにいて。君は私が守る」
「A、俺何回も言ったよな?一時の情に流されんなって」
「だ、だって私、そんな任務内容聞いてない。なんで、何でこの子が殺されなきゃいけない?この子が一体何をしたっての。
ほんの一週間程度しか関わってないけどさ、でも、でもこの子は他人に「殺してほしい」って思われるような事なんて1つもしてない!!」
「A」
「おじさん。ごめん、私、私は……例えそれが依頼だとしても、この子を死なせたくない。だから……!」
ぐっと刀を強く握りしめる。
少年のこと、初めは無愛想な子だと思った。でも、この子は誰よりも、強くて逞しくて、何より優しい子だと知った。
依頼なんてこの際無視だ。おじさんには悪いけど、私はこの子の側に立つ。
「退け、A」
「いやだ。退かない」
「……わかりました。納得のいく理由です」
「え」
彼は静かに頷くと、臨戦態勢に入っている私の前に出た。……え?
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あさり(プロフ) - 夢小説特有の面白みもありつつ、しっかりと原作沿いにも成っていてこれは良作 (2020年7月16日 15時) (レス) id: 32331818c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nny。 x他1人 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年7月13日 18時