第十二話「刀」 ページ13
自分の足が自分のものではないかのように感じる。このまま飛んで行ってしまうのではないかと錯覚してしまう程、その足取りは実に軽やかである。
でも、それはきっと、いま私を"動かしている"のは私ではないからだ。
「……いた!えっと……少年!」
泣き喚きながら何処かの家の扉を必死に叩く、『泥田坊』とは違う少年の姿を視界に捉えた。
彼は私の声に気付きバッとこちらに向く。良かった、怪我はなさそうだ。
弥太郎くんは駆けて来る巨大なコウモリの姿にギョッとしているようにも見えたが、すぐに私だと気付いたようで「お姉さん!!」と私の腰元へ飛び込むように抱きついてきた。
「何があった?どうしてここに」
「ど、ど、泥田坊に殺される!!!アイツ物の怪だったんやぁ!!ここにおったら殺される!!助けて!!!」
「えっ、それってどういう」
刹那、弥太郎くんの背後、誰もいないと思われていたその家の扉が突然荒々しく開いた。
その奥から、2つの悍ましい存在が姿を現すのを視界の隅で捉えた。
酷い腐臭が辺りに立ち込め、恐怖で錯乱状態に陥っていた弥太郎くんもその存在に気付く。
「ひっっ!?」
「よっし当たり引いた!少年ちょっとごめん、」
離れてて、と続けようとしたが、『化け物』の姿を間近で見てしまった弥太郎くんは恐怖のあまり気絶してしまったようで、私の身体に彼の全体重がもたれかかった。
「ウワッマジか!しょ、少年ーー!!」
2匹の化け物、恐らく今回の事件の重要な手がかりとなる「腐った家畜の死体(動く)」は、私たちに狙いを定め、悍ましい唸り声を上げ同時に襲いかかってきた。
腰元に手を当て、抜刀するかのように素早く腕を引く。
それと同時に、右手に慣れた感触がある事を確認する。
それが“何”だと認識するより早く、右手はそれを強く掴んだまま横へ力強く振り切った。
目の前の化け物の頭は斬り落とされたかのように消えて無くなっていた。遅れて、ゴトリと質量のある物が遠くで転がる。
「確かにこれ、近くで見たら失神モノだわ」
完全に物言わぬ屍と化したモノを前に呟いた。
右手に握っている、鈍い輝きを放つ“日本刀”の刃先から得体の知れない色をした液体がこびり付いているのを横目に見て顔を歪める。血の色が緑とかカマキリか。ぺっぺっと刀を振り緑色の血を飛ばす。
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あさり(プロフ) - 夢小説特有の面白みもありつつ、しっかりと原作沿いにも成っていてこれは良作 (2020年7月16日 15時) (レス) id: 32331818c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nny。 x他1人 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年7月13日 18時