第十一話「新月」 ページ12
でも手伝わない罪悪感をひしひしと感じ、田んぼから出たあと振り返り「手伝えなくてごめんね少年!畑仕事頑張ってね!」と遠くの方から叫ぶと、少年は少し驚いたように瞬きをし、「ありがとうございます」と返しぺこりと頭を下げた。
今になって分かったが、少年はこの世の事に疎いみたいだった。
そういった教育を受けてないのか?というのは、平日にも関わらず学校へ向かう事なく畑仕事を行っているという点でなんとなく分かっていた。
でも敬語はしっかり使えてるしな、不思議。まあ私も学校へ行ってないからアレなんだけども。
旅館の女将はあの子の親ではないのだろうか?彼をやけにぞんざいに扱っているような気がする。少なくとももう一人?の息子である弥太郎くんにはそんな扱いはしてないから、明らかに差別しているように見える。
村ならではの古めかしい風習でもあるのか?何にせよ、不愉快極まりない。だからといってはなんだが、弥太郎くんより少年の方を贔屓目に見てしまうのは仕方がない事だろう。
しかし、うーん、なんだか気になる。とりあえず今日もその辺散歩しよ。少年いないかな。
***
ようやく新月の日が来た。これでパパッと解決できたら良いんだけどね!大抵何か起こるから大して期待はしていない!
あの奇妙な事件は夜に起こるとの事なので、昼間はまたいつものように過ごし、夜に備えた。
今日は気合を入れて黒いコウモリの着ぐるみに身を包んで見る。
「おじさんおじさん、この格好だとさ、真夜中にその辺うろちょろしてたら獲物として狙われそうじゃない?」
「おーそうだな。なんなら囮役として使ってやろうか?」
「そういったのは勘弁」
そんなことを話していた直後、外から子供の悲鳴が聞こえた。
脳がそれが「何」だと認識するより前に、身体が勝手に動く。
咄嗟に部屋の窓を開け外へ身を踊らせ、硬い地面に着地すると同時に悲鳴が聞こえた方向へ走る。ほぼ無意識の状態で行動していた。
悲鳴が聞こえた辺りへ来てみたが、誰もいない。
何処へ行った?とキョロキョロ見渡していると、普段より恐ろしく敏感になった聴覚が誰かが走って遠去かって行くような音を捉えた。方角はここから南、そう離れてはいない距離。
遅れて走って来たおじさんに「私あっち見てくる!」とだけ言い残し、おじさんの返事も待たずに裸足のまま駆け出す。
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あさり(プロフ) - 夢小説特有の面白みもありつつ、しっかりと原作沿いにも成っていてこれは良作 (2020年7月16日 15時) (レス) id: 32331818c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nny。 x他1人 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年7月13日 18時