メランコリーに溺れて

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俺は一体何をしてるんだ。


F「俺なにしてんだろーって思ってるでしょ」

「え、」


ふはっと笑う藤ヶ谷さんが運転する車は、乗った瞬間とってもいい香りがした。


藤ヶ谷さんからの『すぐ行きたい』いうメールに

寂しさからくる衝動を吹っ飛ばし『今度誘う』と曖昧なメッセージを送ったはずだった。


そして藤ヶ谷さんから貰っていた二日酔いに効く薬を飲んで、また眠った。


衝動は吹っ飛ばしたが、寂しさは飛んでいなかったから。


このまま寝たら案外時間が経って、たまが帰ってくる時間になるかもなんて思って。

寝てる俺を見つけて、心配してくれたりして…と妄想して。


でも、起きたばっかだしそんな昼寝は2時間も経たなかった。まだ夕方には遠い。


「え…」


薬でマシになった体を起こして、スマホを開くと藤ヶ谷さんから『体調は大丈夫なの？』というメッセージの後に、着信が3件入っていた。


返信していないたまからは、あれから何も連絡がないのに。


よく見ると最後の着信は10分前だったから、かけ直してみた。

「どうし…」

F『よかったー！心配したよ…連絡ないから何かあったかと』

「あっ、はは！バカ…寝てただけだよ」

F『もー…マンションの前まで来ちゃったんだけど』

「は？！」


なんて、お人好しな奴なんだろうと思ったと同時嬉しかった。


大丈夫だったなら帰るねと言った藤ヶ谷さんを、さすがに止めないわけにもいかず。
だけど、1人で住んでいるわけではないこの家に上がらせるわけにもいかず。


「何してんだろうなんて思ってねぇよ。同僚の家行くだけじゃん」

F「まあねぇ」


じゃあ、どっか飯行く？って誘ったら
一応体調が不安だから、俺の家にしようと言われた。


マンションまで藤ヶ谷さんは車で来ていた。

助手席に乗せてもらうなんていつぶりだろう。いつも運転する側だもんな…いや、したくてしているけど。

あー…そういえば、二階堂の隣乗ったっけ。なんて思う。


けど、この助手席もこの香りも

ただの助手席じゃないし、ただの香りじゃないと思う。


普通じゃないと感じる。危ないと感じる。


F「北山さん、本当に体調大丈夫ならスーパー、一緒に行く？
無理するなら、家上がらせてから俺1人で行く」

「全然平気だぜ。藤ヶ谷さんから貰った薬効いた」

F「良かった。何か食べたいものある？」

「んーまあでも、胃ムカムカするから優しーやつ」

F「何があるかなぁ」


ううん。普通だよな。

俺は同僚の家で飯を食うだけ。

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