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F「千賀達のところまだ移動する気配ないね」
上司がバラバラと立ち上がり、俺達の居た机が二人だけになったところで、藤ヶ谷さんがそう呟いた。
「うん。でも、もう帰っていーよ」
F「え?行かないの?」
なんだ。サラッと立ち上がって帰るんだと思ってた。
「逆に行きたい?」
F「行きたくないけど。行かされるもんだと」
「いーよ二次は。俺もしばらくしたら帰るし。
藤ヶ谷さんもうササッと帰りな。ギリ終電あるんじゃね」
掘り炬燵でよかった…と思いながら、畳にゴロンと上半身を倒して時計を見る。まだ電車は何本か通ってそう。
F「北山さんも帰るんでしょ?」
「ちょっと休んで帰る。二階堂に二次会は行かないって言ってあるから、安心して帰っていいぞ」
やっぱり人のこと放っておけない奴なんだなと思いながら、また迷惑掛けられないし、先帰るように促す。
F「…一緒に出る」
「………あ?」
F「北山さんと一緒に出るって」
いや、なんで。
普段あんななのに、こいつは変なところでこんなにもお人好しが出る性格なのか?
それとも…急に変なこと言い出す癖があるのか?
酔ってるし、今の俺にはさらにこいつのことがわからない。
F「俺が飲めないから。迷惑かけたし」
「んははっ、気にしないでいーよ」
F「頭、痛い?」
「んー?だいじょーぶ」
そう言うと、藤ヶ谷さんの細長い指が伸びてきた。
俺の眉間に。
「え?」
F「シワ寄ってる。痛いんでしょ」
話し方も表情もいつものクールな藤ヶ谷さんのままなのに、心配してもらっているからか声も顔も優しく見える。
下から見上げるその顔は、やっぱイケメン。
眉間を触ったその指が、サラリと俺の前髪を触り
そのまま今度は手のひらが頬に当たる。
F「熱い。ごめん飲ませすぎた」
普段冷たいのにこんなことしちゃうなんて
女子はギャップ萌えで一瞬にして落ちるだろうな、なんて
余計なことを思ってしまったのも、なんだか顔が熱るのも酒のせいか。
「…気にすんなよ。藤ヶ谷さんも多少は飲んでたじゃん?
顔赤いよ。無理に飲まなくてよかったのに」
完全に飲まれた。
酒にも、藤ヶ谷さんにも。
藤ヶ谷さんの赤くなった熱い頬に手を当ててしまった。普段なら絶対こんなことできないのに。
歩いてないのに結局回ってる。
やはり、寝転ばなかったらよかった。起き上がるのが怠い。
F「すぐ戻る。そのまま待ってて」
藤ヶ谷さんは財布だけ持ち何処かへ行ってしまい
俺はそのまま目を閉じた。
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櫻弓 想(プロフ) - のこさん» はじめまして!コメント気づくの遅くてすみません🥲どきどき読んでいただきありがとうございます!!ご期待に添えるような作品になるよう頑張ります! (2022年5月15日 20時) (レス) id: 03403d3789 (このIDを非表示/違反報告)
のこ(プロフ) - もしかしてはじめましてかも。いつも楽しみにしています。次の展開にドキドキしてますが北山担としては北山くんが愛されてるのが嬉しいです。みんな幸せになりますように (2022年4月2日 7時) (レス) @page50 id: c027cef8fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:櫻弓 想 | 作成日時:2022年3月12日 21時