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「み、みつ…?ありが、と?」
ミツが珍しく自分から抱きついてきた。
誕生日だから、照れ屋なのに頑張ってくれてんだなと思ったのも束の間…ギュッとしがみつくようにして離れない。
K「た、ま…」
「え…?」
掠れ気味の声で俺の名前を呼んだ。その後に鼻を啜る音。
ミツ、泣いてる…?なんで。
「ミツ?!ごめんね?
俺のリアクションそんな酷かったかな?!
ほんっとに嬉しいんだよ?顔あげてミツ…」
とにかく焦って、さっきまでの行動を必死に謝りながらミツの頭をポンポンと叩く。
表情が明るくならないとは思っていたけど、ここまでとは思っていなくて…。
誤魔化して慌ててプレゼント取りに行ったミツの背中を見送った時、きっともう日付は越すし「おめでとー!」って明るい雰囲気に自然に転換するだろうなんて正直思ってた。
K「ごめん…32歳おめでとう。
なのに急に困らせちゃったわ、へへっ」
ゆっくり俺の胸から顔を上げたミツが笑ってそう言って。
雑に袖口で涙を拭いた。
さすがにおかしくない…?
いや、一生懸命荷物抱えて走ってきてくれたことはわかってるけど。
俺のリアクションどうこうだけで…泣くような人じゃ。
「ミツ…どうかした?」
K「いや、ははっ…疲れてんのかな」
「理由はあとでいいから。泣いていいよ?
もう今日はこんな荷物抱えて走ってきてくれただけで充分。それにほら、休日また祝ってくれるんでしょ?
だからとりあえず今は誕生日置いといて…ね、俺は今ミツが心配」
K「や、えっと…あの、さっきのトラブったってやつ
俺のミス…で。けっこー凹んで…ははっ、それであの…
一旦忘れて走ってきたつもりなんだけど、たまの顔見たら安心しちゃった。ごめん、ほんと…おれ」
また目が潤み出したミツを抱きしめて、そっと頭を撫でる。
ミツの泣き顔なんて…いつぶりだろう見たの。いや、見たことあったっけ?
「ミツ、そんな中俺のために走ってくれてありがとうね。
プレゼントも嬉しいけど、俺はミツからもっと甘えられたい。
弱音吐いてもいいし、いっぱい泣いてくれていい。32歳以降の俺の前ではそうしてよ」
K「以降、って…来年からも祝えるってこと?」
「何言ってんの。祝ってくれないの?
あ、物ねだってるんじゃないよ」
K「ハハッ、わかってるわ」
また胸に体を預けたミツの姿を上から見て…
あーこんなミツ見たの初めてだなって。相当疲れてんだなって思った。
まさか、嘘なんて思ってなくて。
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櫻弓 想(プロフ) - のこさん» はじめまして!コメント気づくの遅くてすみません🥲どきどき読んでいただきありがとうございます!!ご期待に添えるような作品になるよう頑張ります! (2022年5月15日 20時) (レス) id: 03403d3789 (このIDを非表示/違反報告)
のこ(プロフ) - もしかしてはじめましてかも。いつも楽しみにしています。次の展開にドキドキしてますが北山担としては北山くんが愛されてるのが嬉しいです。みんな幸せになりますように (2022年4月2日 7時) (レス) @page50 id: c027cef8fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:櫻弓 想 | 作成日時:2022年3月12日 21時