チグリジアⅣ ー愛して、助けてー (ページ16)

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蓮side

蓮｢なにこれ。え、どう切るの？｣

康｢これはなぁ、こうして、こう切るんやで｣

半分に切った玉ねぎの断面を下にし、端から手際よく切っていく康二

慣れてんな～、こいつ

｢ねぇ、蓮座ってていいよ？危ないし...｣

蓮｢いや、俺もやる｣

風呂から上がったら、康二と二人で仲良さそうにキッチンに立ってたから、少し嫉妬した

だから、俺だってやればできるんだぞってところを見せてやろうと思ったのに、俺よりもできるやつが隣にいた

主に料理担当はAだったから、何回かやったぐらいで、包丁さばきはほぼほぼ初心者だ

それくらい俺はAを頼りにしていたんだ

蓮｢いって、｣

｢ほらー、もう言わんこっちゃない｣

指先からじわじわと滲み出る血

隣からも呆れた声が聞こえ、ちょっと落ち込む

｢水で流して、絆創膏はんな？｣

蛇口を捻り、水道でスタンバイしてくれるA

そういうさり気ない優しさが好きなんだよ

小さな傷口に流水を通すと、微かに痛みが走る

蓮｢別に俺が料理できなくても、ずっとAが作ってくれるからいいし....｣

ボソッと呟いた言葉に、Aは小さな声で｢そうだね｣と答えた

視界に入っているその顔は、困ったように目じりを下げながら、流れる水を眺めている

そんな顔をさせたいわけじゃない

だって好きな人には笑ってて欲しいから

けど、Aが離れていくのが怖い

ずっと傍にいたのに、俺の隣からいなくなることがまだ受け入れられない

だからもう少しだけでも、独り占めさせてよ

康｢Aちゃーん！次これどうするーん！？｣

｢それはねー、｣

康二の問いかけに答えるように、俺の元から離れていくA

すぐ近くにいる康二の所へ行くだけなのに、それさえも寂しく感じる

Aが本当の意味で俺の傍から離れる時、俺は自分自身を保っていれるんだろうか....