55 蓮side ページ7
蓮side
俺の発言に、渡辺さんは驚きと戸惑いの表情を隠せていない
渡辺さんがAに好意を抱いているかは、初対面の時点ではまだ定かではなかった
けど、今のこの人の表情を見ていれば、わかる
眠るAを愛おしそうに見つめる目と大事そうに扱う仕草、そして俺へのちょっとした敵意
渡辺さんはAを俺のベッドに下ろした後、じゃあなと言って、彼女の頭を撫でた
こんなの好きなやつにしかしないだろ
俺の中で不確かだった思いが、確信へと変わった
渡辺さんは、Aが好きなんだ＿＿＿＿
渡「じゃあ。遅くに失礼しました」
そう言って、俺の部屋を出ていく彼を玄関まで見送る
蓮「ほんとご迷惑おかけしました。今後は必ず俺が行くんで」
渡「いや大丈夫ですよ。ちょうど仕事帰りでしたし。"弟"さんもいろいろと忙しいだろうから、送り迎えは任せてください」
"弟"というワードが俺に突き刺さる
まるで、Aは俺の事を男して見れるはずがないと言われているようで。
渡「じゃあ。おやすみなさい」
ぺこりと会釈して、ドアを閉める
部屋へ行くと、俺のベッドでスヤスヤと眠るAが目に入る
ベッドに腰掛け、頭撫でると、「ふっか」って小さい声で呟くんだ
その呟きに胸の苦しさを覚えながらも、心のどこかで安心する部分はあった
まだAの中にはふっかさんがいて、さっきの渡辺さんはいない。ふっかさんはAに気がないから、渡辺さんに心変わりしない限り、彼女は誰のものにもならないから。
Aの目元には、涙の跡がついていた
俺はそれを拭って、彼女を抱きしめるようにして、眠りについた
Aが俺の傍にずっといてくれますように＿＿＿＿
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作者名：たまっち
| 作成日時：2021年2月20日 1時
