ペットにしてください。２

88 岩本side ページ40

岩本side

バカ、と呟けば、ごめん、と返される






岩「旅行なんて、嘘バレバレ」


「ははっ、ひー兄には嘘つけないや」


岩「当たりめぇだろ、ほら泣くな」







そう言えば逆効果で、Aはポロポロと涙を流す


目の前で女に泣かれるなんて、何年ぶりかで、どうしたらいいかわかんねぇ。







いや、ちがう


"女"なんかじゃなく"好きなやつ"の間違い








なけなしの理性で、抱き締めたい衝動を必死に抑える








岩「ふっかと、なんかあった？」


「たつやくんと私の間には何もない」


岩「じゃあ、なんで？」


「"わたしと"じゃなくて、"あの人"と、かな？」








"あの人"って誰だ？


そんな疑問を躊躇いもなくそのまま口にする









「たつやくんの元恋人。その人のこと、ずっと好きだったんだって」







百合さんだ


何度か俺も会ったことがある


ふっかから振られたと報告を受けた後は、俺もなんて慰めればいいかわかんないくらい落ち込んでた


ずっと忘れられなかったのは、俺でも気づいていた


でも、Aが来てから、そんな気持ちはとっくになくなっていたと思ったけど。









「ひー兄、知ってた？」


岩「誰かは分かる。俺も何回か会ったことあるし」


「そっか。仕事で遅くなるって言ってたのに、昨日その人と一緒にいるところ見ちゃって」








"すごく楽しそうだった"









そう言うAは、すげぇ辛そうで苦しそうで。


でも、表情だけは笑ってる







いつも、こうしてきついことを乗り越えてきたんだと考える









岩「うち来るか？」


「へ？」


岩「どこにも行くとこないだろ」







そうは提案するも、首を横に振られる








岩「Aの飯食いてーなー。あぁ、あの時看病したの誰だっけかなー。こんな夜道に女1人置いてくとか俺男失格だ「わかった！！」








俺にしちゃあ、ずるい手を使ったと思う


でも、こうでもしないと彼女は首を縦に振らない









ほっとけないだけ。


ただ、それだけ。






妹みたいなもんだからさ。









そうやって、言い聞かせるしかないんだ

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