手紙 ページ2
ここはとある村。
なんの変哲も無い、平和な村。
そんな村に一応勇者として僕は相棒兼恋人のクリスと一緒に住んでいる。
「おはよ、フェイ」
ふと、後ろから声をかけられた。
振り返るとそこにはクリスが立っていた。
相変わらずシルクハットを被り、煙草を吸っている。
「…クリス。煙草は臭いから辞めろ、って何回言えばわかるの？」
彼が近づいてきた瞬間付近の匂いは全てかき消され、自然と不快感を覚える様な臭いに変わってしまう。
折角この場の空気を味わっていたのに、彼が来ては台無しだ。
「別に良いだろ〜。これ吸ってると落ち着くんだよ」
クリスは煙草を口に含み、白い煙と共に息を吐く。
周囲の余計に臭いが強くなった気がして僕は無意識的に手を煽いだ。
「これそんな臭いかぁ？」
僕の行動が不服に感じたのか、クリスはそう聞いてくるが、何度も臭いと言われる程臭いを発している事を自覚してほしい。
「はぁ…何度も言ってるだろ」
呆れてため息を吐く僕を見て「うーん」と何故か頭を抱えた。
「じゃあ暫くは煙草辞めるかぁ」
彼が突然そう言うので僕は目を丸くする。一体この数秒間で彼の思考になんの変化があったのだろうか。
「幾ら言っても聞かなかったのに…」
驚嘆してる僕を見て「唯の気まぐれだ」と彼は悪戯に笑った。
「――あ、そうだ。そういやさっきポストに手紙が入ってたんだよ」
自身のポケットから一通の手紙を取り出し此方へ見せた。
手紙にはクリス様、フェイ様と御丁寧に2人の名前が書かれ、封蝋がされている。
「……それ誰から…？」
何処かで見た事のある手紙の様式に僕は少し身構え、彼に問う。
クリスは手紙の裏表を交互に見たがどうやら差出人は書いて無かったらしく首を傾げた。
「取り敢えず中見てみようぜ。依頼かもしんねえしな」
差出人不明の手紙をよくもそんな不用心に開けられるなと思い「一応しっかり確認した方が良いんじゃない？罠とかだったら怖いし」
僕の言葉を聞いてか聞かずか「まぁなんとかなる」と警戒心皆無で彼は封を開けた。
「んー、なになに？」
紙を広げ彼が内容を音読し始める。
「勇者の皆様御機嫌よう。今宵開催される我等魔王軍の御茶会に貴方々にも参加して頂こうとこの手紙を送らせて頂きました。――魔王より」
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作者名：たまご | 作成日時：2019年8月14日 9時
