二百六十九話 ページ43
こちらを責めているはずなのに瞳に動揺が見える。
確かに伊東くんにとどめをさしたのは
でもその顔は、今の言葉と合ってない。
下唇をかんで未だに睨み続けている黒髪くんへと目線を移した。
敵意は見える、だけど焦っているようにも苦しそうな表情にも感じ取れる。
きっと、分かってるんだ。
口では伊東くんの死を人のせいにしてても、彼の死は誰のせいでもないと。
彼をすぐ側で見てきたなら何をしようとしているか知っていただろう。
伊東くんは悪事を働いて、罰された。ただそれだけの話。
でも、だからこそ。大切な人を殺されたとき、憎しみを向ける矛先を見失うんだ。
頭の中では理解できているけど、誰かにそれを向けなければおかしくなりそうで。
『うん、確かに伊東くんは真選組で罰した。
けど、責任を人に押し付けても後で自分が苦しくなるだけだよ』
私が苦い顔をして黒髪くんに言った。
その言葉の影響なのか黒髪くんが泣き出しそうになった顔を右手で隠す。
そしてしゃがんでか細い声で呟いた。
「……じゃあ、どうすればいいんだ。
大切な人を失ったというのに憎しみを向ける先もない、自分の意思なんてもうとっくに消え失せている。そんな中、俺にどうしろというんだ」
自分の意思がないとは。新しい爆弾掘り出しちゃったな。
要するに伊東くんの言葉がないと動けないってことか。
…でもそれなら、一つ説明のいかないことがある。
『じゃあ、私に刀を貸したのも伊東くんの意思?』
「‼」
分かりやすく肩が揺れた。やっぱり置かれてた刀は黒髪くんのだったんだ。
これが伊東くんの意思だとは考えづらい。
あの状況だったし、見切られたっぽい私を生かす理由がないから。
黒髪くんの返答を待っていると少し驚く情報が耳に入ってきた。
「あれは、先生が哀しそうな目をしてたから…」
…伊東くん、悪人に成りきれてない。
と思いつつも彼の人の良さは充分知っているつもりなので今は黒髪くんの会話へと思考を戻す。
『でも伊東くんは何も言ってなかったでしょ』
「……嗚呼」
その相づちをを聞いて腰へ手を掛ける。
私はあの件以降ずっと腰にさげていた刀を、黒髪くんに差し出した。
『なら、それは立派な君の意思だよ』
黒髪くんはゆっくりとその刀を受け取ってまじまじと見つめた。
人の意思を押し潰すようなことはしない、私の中の伊東くん像はそうなんだよな。
111人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たこわさび - めぐぽん(*´・∀・)さん» こんにちは、一気見していただきありがとうございます。本作品は恋愛要素がゼロに等しいですがそこまで読める何かがあったと思うと嬉しいです。新ジャンル開拓のお手伝いになれればと思います。 (2023年3月2日 23時) (レス) id: eddcdf4797 (このIDを非表示/違反報告)
めぐぽん(*´・∀・)(プロフ) - こんにちは^_^一気見させて頂いてます。正直、恋愛ものが好きだったのでここまで読めると思いませんでした。楽しいです。 (2023年3月2日 18時) (レス) id: baf8bee298 (このIDを非表示/違反報告)
たこわさび - ふじゆずさん» 銀魂を読み返してくれるきっかけになったのなら嬉しいです!こちらこそありがとうございます‼無理しない範囲で更新続けていきますね! (2022年11月5日 22時) (レス) id: eddcdf4797 (このIDを非表示/違反報告)
ふじゆず(プロフ) - すっごい面白いです!!(語彙力)この作品見て久々に銀魂読もうと思いました!!ありがとうございます!!(?)無理しないでください!!ありがとうございました!!(?) (2022年11月5日 21時) (レス) id: af6d5fb7bc (このIDを非表示/違反報告)
たこわさび - さちさん» コメントありがとうございます!更新を楽しみにしていただけて光栄です。これからもがんばります。 (2022年11月4日 22時) (レス) @page10 id: eddcdf4797 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:たこわさび | 作成日時:2022年10月25日 18時