…弟!? ページ5
クリスside
「いいからっ、貸しなさいっ!」
「お前が離せ!」
如月さんが教室の前で誰かと言い合っているのが聞こえる。
男の子の声だ。仲がいい人なのかしら?
教室のみんなが好奇心で、なにが出るかとドアを見つめる。
まもなく、如月さんが入ってきた。
やたらと重そうに紺色の体操着袋をしっかり掴んでいる。
そのあとから、ずるずると引っ張られて男の子が姿を現した。
顔を伏せて踏ん張ってはいるが、どうしても勝てないらしい。
「いい?私はどんな困難にも立ち向かう、運命の救世主なのよ…っ!」
「…もういいわ…」
やがて諦めたように、男の子が手を離す。
彼が顔を上げると、全員が息を呑んだ。
身長は如月さんと同じくらい。
鴉のような真っ黒の髪で、左目を隠したようになっている。
右目だけしか見えないけれど、如月さんに負けず劣らずの美形だった。
「転校して1週間しか経ってないのに、体操着忘れるって…しかも弟のを無理やり奪うし。姉としてどうなんだよ」
…弟!?
如月さんの弟くんは、ちらりと私たちに視線を向ける。
気まずそうに顔をしかめると、軽く会釈した。
「えーと、お騒がせしてすみません。こいつの言うことは外国語だと思ってスルーしてください」
「そうね…私の宿命を見て見ぬふりをするのは賢明な判断だと思うわ」
「もうしゃべるな、お前」
ー
弟くんが去ったあと。
教室内はすぐ対話が飛び交うようになった。
だけど、誰も如月さんに接触しようとしない。
1人で、孤立している。
どうしたらいいのかしら?きっと、悪い人ではないわよね…
でも、話しかける勇気が…
既に着替えを終わらせたすみれに、いきなり腕を掴まれる。
「えっ、すみれ?」
どこに向かうのかもわからず、とりあえず足を動かす。
その先は…
「夕凪ー!さっきの人、弟?名前なんていうの?」
「あら…私に話しかけるの?物好きもいたものね…」
いっ、いきなり名前呼び!?しかも呼び捨て!?
あっさりしたところもすみれのいいところだとは思うけれど…
でも、如月さんも受け入れているから、いいのかしら…?
そうしている間に、2人はどんどん話し込んでいく。
…わたしも、如月さんと話してみたいわ。
勇気を振り絞って、わたしから口を開く。
「あっ、あの、如月さん!…こ、今度、一緒にお買い物しませんかっ…!」
あああっ、唐突すぎた!
恐る恐る如月さんを見ると、彼女は控えめに笑みを浮かべた。
「…夕凪でいいわ。ぜひ、行きましょう」
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河合 - 如月ちゃんドストライクで好きなんだが。かわゆす。私の方においで (2022年6月14日 18時) (レス) @page1 id: b19d72a5db (このIDを非表示/違反報告)
春桜 - なにがあった。弟君。オオ…('o';) (2022年5月4日 18時) (レス) @page7 id: 45a95b1035 (このIDを非表示/違反報告)
ぺん太 - 弟くんキターヾ(°∀° )/ー! (2022年4月16日 17時) (レス) @page6 id: 1f3dfec746 (このIDを非表示/違反報告)
渚橋の部屋 - お役に立てて良かったです!! (2022年4月5日 12時) (レス) id: 9bce8148b0 (このIDを非表示/違反報告)
たまご - 渚橋の部屋さん» おうふ…よくやるやつ…指摘ありがと… (2022年4月4日 11時) (レス) id: 28ca9da869 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たまご | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/suikahqd/
作成日時:2021年11月18日 19時