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荒船side
「荒船、なんか久しぶりだな」
俺がスナイパーの練習場から帰ろうと出たところで、そう言って声をかけてきたのは同い年で弟子でもある、鋼だった。
「あぁ、学校の定期テストとか委員会とかで忙しくて、中々、ボーダーに顔を出せなかったんだ」
六頴館はいわゆる進学校に当たり、勉強もボーダーだからといって手を抜くようなことはない。だが、このテストが終われば夏休みがくる。ボーダーである以上、あまり遊んだりはできないだろうが、それでも、夏休みという言葉の響きにワクワクしないものなどいるだろうか。
「今から、みんなと集まってカゲの家に食べに行こうって話してるんだけど、荒船も来ない？」
鋼はそう言って、ちょっと口角を上げた。
カゲの家はお好み焼き屋で俺は昔からそこのお好み焼きがすきだった。ほくほくのお好み焼きの上で鰹節が踊る姿は何回見ても見飽きない。そんな事を考えているとお腹がすいてきた。
「行く」
俺の即答ぶりに鋼が笑った。
着くと、同い年のいつものメンバーが揃っていた。
4人がけの席を何個か使って座っていて、俺はカゲの隣に座って、鋼はカゲの前に座った。
「今日は店の手伝いしなくていいのか？」
「今日はバイトがきてるからいいんだよ」
カゲはボサボサの頭をガシガシかきながら、答えた。
「バイトなんて雇っていたか？」
「荒船は久しぶりだから知らないんだな 新しく雇ったらしい」
鋼がふわっと笑いながら、言った。
「すごい美人だぞ、新しいバイトは」
隣の4人がけの席からした声の方を見ると、同じ隊員である穂刈がこちらを向いて話しに入ってきた。
「愛嬌もあっていい子そうだよね」
穂刈の前に座っている犬飼がそう言った。
なるほど、皆が口を揃えてそういうほど、美人なのならば、見てみたい。ボーダーに所属しているが、男子高校生には変わりない。美人な子なのならば一目見てみたいと思うのは当たり前だろう。
「ご注文はお決まりでしょうか？」
そう言って、俺たちの前に現れた彼女はなるほど、美人と言っても過言ではないのだろう。
健康的に焼けた肌にパッチリとした瞳、ピンク色の薄い唇、ポニーテールしてある髪。細い手足。美人というよりかは美少女と言った方がしっくりくるようなそんな少女だった。
夏用の三門第一高校の制服の上にエプロンを着ていて、あぁ、高校生なんだなと思う。
「あ、影浦先輩！」
カゲの姿を見つけて、ほろっと笑う姿は年齢よりも幼く見えた。
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作者名：つちのこ | 作成日時：2020年6月3日 0時
