8話 聖人君子と素人と ページ9
爆破に耐えきれなかった蝶番が爆ぜる。扉ががらんがらんと音を立てて部屋の中に転がってくる。
般若のような形相のかっくん、冷たい目でこっちを一瞥した紅白くん。何の対策も取らず、動こうともしないボクへの軽蔑がありありと見てとれる。
「テメェは本当に人の神経を逆撫でする野郎だなァ……」
「野郎じゃないのだ。一応女子なのだ」
すっとんきょうな発言をすれば向こうは勝手に勘違いして怒ってくれる。良くも悪くも
「死ねェ！！！」
右の大振り。さっきずっくーにも指摘されてただろうに、よく懲りずに繰り出せるな。
火力も機動力も高い。でもそれはまだ、“学生にしては”という修飾語をつけないといけないレベル。ボクからすれば、まぁ、
「素人にしては頑張りました、って感じなのだ」
一歩左前に踏み出す。お腹と右腕を両手で掴んで、ぐるりと一回転。平衡感覚は凡人と大差ない。かっくんが地面に背中をつけるギリギリで肘鉄をガラ空きの胴体に叩き込む。
ガヒュ、酸素が肺から抜ける音を聞いた。まず一発。
慌てたように飛んでくる氷を裏拳で弾き飛ばす。遅い、それに判断ミス。ここは上の方を狙って炎をとばすべきだった。
「難しいことじゃないのだ」
咳き込むかっくんの顎に一発。脳震盪を起こせばしばらくは動けない。硬直した体に捕獲テープを巻き付ける。
「
床を蹴る。落下の勢いを利用して氷を出せる右肩をはじこうとしたら凍らされる。好都合。
「最大限の選択肢から、最良を選ぶだけ」
近距離に弱いかと思ったけどそうでもない。強い“個性”を持った人間はだいたい接近戦に弱いけどそこも対策してるみたいだ。感心感心。
でも、ボクの方が速いみたいだ。
足をはらう。バランスを崩せばキミは、ほら。
「氷を出す」
ボクの“個性”は万能だけど無敵じゃない。だから判断力と想像力を磨いた。判断できれば選択できる。想像できれば対処できる。簡単なこと。
氷を封じればこの人は意外と無力だ。なんのこだわりがあるのかは知らない。知ろうとも思わない。
でも、その弱点を見逃せるほど、聖人君子でもない。
氷を粉々に砕く。焦った顔を見せたら負けだよ。空を切った左腕に捕獲テープを巻く。
「
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yui(プロフ) - ごまさん» ありがとうございます！ キャラ目線は結構考えて書いてるので、お褒めいただき嬉しいです！ (1月17日 16時) (
レス) id: e9850282aa (このIDを非表示/違反報告)
ごま - あっ…好きです。めっちゃ好きです。キャラ目線の書き方とか神ですか？とにかく好きです。推します。 (1月16日 21時) (レス) id: 9def695b19 (このIDを非表示/違反報告)
yui(プロフ) - まるさん» 私も書きながらときどき浮かんでます（笑）コメントありがとうございます！ 更新頑張ります！ (1月8日 13時) (レス) @page3 id: a2ad79a780 (このIDを非表示/違反報告)
まる - とても面白かったです！口調のおかげでどうしても緑のずんだが…… (1月8日 13時) (レス) @page7 id: b21609e0eb (このIDを非表示/違反報告)
yui(プロフ) - カフカさん» ありがとうございます！ 今作のポイントはズバリ夢主ちゃんなので、そう言っていただけて嬉しいです！ (1月6日 8時) (レス) id: a2ad79a780 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：yui | 作成日時：2024年1月5日 17時
