1話 風雲児 ページ2
「ひっしーひっしー！ 早く来るのだ！」
雄英高校正門前。超がつく名門であるヒーロー科の入試を受けるべく、何百人もの受験生がやってくる今日。
その人は、明らかに浮いていた。
年齢的に同じ受験生だろうけど、ほとんどの受験生が中学の制服に身を包む中、白色のパーカーにジーンズを身につけ、“個性”に関連するのか頭にはヘッドホン。
はしゃいで笑うよく通る声に舌打ちが聞こえて、僕は慌てて前に進んだ。遅れてやってきた紫色の髪の男子も、周りにペコペコと頭を下げて回っている。
「早く行くのだひっしー！」
「お前が急に走るから……おいパラ！」
風変わりな呼び名で呼ばれた少女は、同級生であろう男子の声も無視して小走りで校舎へと入っていった。
しかし僕らは知らなかった。
彼女こそが、今年の入試でとんでもない記録を叩き出す風雲児だということを。
「エヴィバディセイヘイ！！」
「yokoso〜！！」
さっきの女子は説明役のプレゼントマイクにレスポンスを返し、説明の間にも隣の男子にちょっかいをかけている。
そんな彼女の態度に苛立っているのか、隣に座るかっちゃんの額には青筋が浮かんでいた。いや、かっちゃんだけではない。呆れか怒りかため息をついている人は多い。
なんの緊張もありません、とでも言いたげなその態度に、1人の男子が声を上げた。資料の図に対する疑問、という形を取ってはいたけれど、みんな分かった、ついでを装って彼女に苦言を呈するのだと。
「それからパーカーの君も同じだ！ 物見雄山のつもりなら、即刻ここから去りたまえ！」
指を刺され、いやーまいったのだーなんて言いながら立ち上がったパーカー女子はくるりと後ろを向いて、まろく光る黄色の目を細めて芝居っ気のある動きをした。
「ご忠告ありがとうなのだ。でも残念なことに、ボクは本気でここにきているのだ……からきっと厄介なのだろうけど」
独特の口調で自分の考えを述べる姿は同学年には見えなかった。大人が子供の真似をしているような雰囲気。どこかオールマイトにも似たカリスマ性。だって室内は今、まるで彼女のステージだ。
「それに、せっかくなんだから楽しんだ方がいいと思うのだ」
そう言って、彼女は笑った。宣言するように、突きつけるように、圧倒的な“現実”を僕らの目の前に広げてみせた。
「もう一度来れる人間なんて、この中に40人もいないのだ」
太陽のような、底抜けの明るさだった。
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yui(プロフ) - ごまさん» ありがとうございます！ キャラ目線は結構考えて書いてるので、お褒めいただき嬉しいです！ (1月17日 16時) (
レス) id: e9850282aa (このIDを非表示/違反報告)
ごま - あっ…好きです。めっちゃ好きです。キャラ目線の書き方とか神ですか？とにかく好きです。推します。 (1月16日 21時) (レス) id: 9def695b19 (このIDを非表示/違反報告)
yui(プロフ) - まるさん» 私も書きながらときどき浮かんでます（笑）コメントありがとうございます！ 更新頑張ります！ (1月8日 13時) (レス) @page3 id: a2ad79a780 (このIDを非表示/違反報告)
まる - とても面白かったです！口調のおかげでどうしても緑のずんだが…… (1月8日 13時) (レス) @page7 id: b21609e0eb (このIDを非表示/違反報告)
yui(プロフ) - カフカさん» ありがとうございます！ 今作のポイントはズバリ夢主ちゃんなので、そう言っていただけて嬉しいです！ (1月6日 8時) (レス) id: a2ad79a780 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：yui | 作成日時：2024年1月5日 17時
