【アイナナ】アニメヲタクの初恋 (ページ17)

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教室に戻ると桜が不機嫌そうにこちらを見ていた

「どこ行ってたの？！先生に問い詰められたんだけど！！」

『ごめん。屋上で寝てたー』

「維が遅刻ギリギリにダッシュで登校してきたのは先生達に見られてるんだからね！言い訳出来ないよー」

もう、と呆れながらも体育での出来事を楽しそうに語り出す桜

今度お礼しないと…

2時間目の授業が始まり、先生の声だけが響き渡る教室

窓際の一番後ろの席

頭の中は環くんでいっぱい

環くんのこと、もっと知りたい

もっともっとお話がしたい

そしてもっと私を知ってほしい

環くんからしたら私なんて同級生の1人でしかないのかもしれない

どうしたら環くんの［特別］になれるのだろう

どんどん欲張りになっていく

アニメのキャラクターに恋をして、たくさんグッズを買って、それに囲まれた生活は確かに幸せだ

だけどキャラクターはどんなに追い掛けても、どんなに語り掛けても、返事はなく触れることもできない

そんなことわかって追い掛けてきた

…なのに、そんなこととは全然違う

恋をした相手は近くにいて、語り掛ければ返事があり、触れることもできる距離にいる

今まででは考えられない夢のような世界

むっくんごめん…

追っかけてるアニメのキャラクターに勝手に罪悪感を抱き、心の中で泣いた

「維…！維っ…！！」

小声で私を呼ぶ桜の声がした

『…痛っ！！？』

桜の方を振り向く間もなく、誰もいないはずの後ろから誰かに小突かれた

すぐさま後ろを振り返ると呆れ果てた先生が立っていて、隣にいる桜は苦笑いでこちらを見ていた

「小鳥遊、授業中に何考えてたのかな？何回呼んだと思ってたんだ」

『…すいません』

「小鳥遊はもうこの範囲完璧なんだろうなー。随分先まで予習してるんだな。」

え？と机の上に開かれた教科書に目をやると、後ろの方のページが適当に開かれていた

『あ…、あははは…』

はぁ…、とため息をつきながら教室の前まで歩いていく先生を見送り、急いでノートを取り始めた