92* ページ43
・
水城さんは何と答えを返したらいいのか分からずにいるようだ。
私は彼女からの返事を待つことなく、一方的に続けていく。
「私は、拓哉くんの過去に嫉妬をして、自分から手を放しました。」
「なんで…」
「本当に、私は最低でした。」
水城さんは強く首を振って否定すると、
「Aちゃんは、最低じゃない。
拓哉が選んだ人やから。」
分かっている。どんなにあがいたって、この人に勝てないことを。
私は、彼が愛したあなたを憎み、恨み、妬むことしかできなかったのに。
「水城さんは、拓哉くんに対して嫉妬することはありましたか？」
「うん、たっくさん」
「苦しくて、別れようって思ったことは？」
「一回もない」
「なんでですか？」
「…拓哉を、信じてたから。それに、拓哉がおらん方が、もっと苦しいこと、分かってたから」
彼女の腕につけられているバングルに彫られている小さな字が、私を責めるように時々光る。
それは、拓哉くんのものにあるのと同じ、愛の詰まった文字。
「ずっと、拓哉くんのこと、好きでしたか？」
「うん。好きやったよ」
「今も、好きですか？」
「うん、今も好き」
……そうか。答えはもうとっくに出ていたんだ。
私は、カバンからメモ帳とペンを取り出すと、文字を書き綴った。
書き終えたそれを彼女の手のひらにそっと置く。
「これは？」
「もし、拓哉くんが水城さんと話を聞いてくれる時が来たら、これを開いてください」
言い切ってすぐ、水城さんに向かって頭を下げると、私は振り返ることなく公園を飛び出た。
その足で、みなみたちとの待ち合わせ場所へと向かう。
今は何も考えたくない。
何も考えられない。
涙も出ない。
悲しくなんかない。
視界がぼんやりと濁っている。
今日、あなたに会うことができてよかった。
拓哉くんが過去に愛したあなたに会うことができて、本当によかった。
でも、もう、二度と話すことはないでしょう。
気持ちの整理がつかないうちに待ち合わせ場所に到着すると、みなみが落ち着かない様子で、早くも待っていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 625人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アババ - はんなり豆腐さん» いえいえ笑こんな駄作を読んで頂けていることに感謝です…！ (2020年4月7日 20時) (
レス) id: fcf1d7c074 (このIDを非表示/違反報告)
はんなり豆腐(プロフ) - アババさん» うるさいやつですがそんなに優しく言っていただいて嬉しいです！ありがとうございます！ (2020年4月7日 19時) (レス) id: dba7803696 (このIDを非表示/違反報告)
アババ - はんなり豆腐さん» もう、全然構いませんよ！逆に読者の方々とやり取りできるのは、ジャニオタとしても作者としても嬉しいかぎりです…！ (2020年4月7日 11時) (レス) id: fcf1d7c074 (このIDを非表示/違反報告)
はんなり豆腐(プロフ) - アババさん» はい！もーアババさんがうざって思うぐらいコメントさせていただきます！ (2020年4月7日 1時) (レス) id: dba7803696 (このIDを非表示/違反報告)
アババ - はんなり豆腐さん» うわー、マジですか笑お話の構成うまくいってないかなーって思ってたんで安心しました…(ホッ 続編でもご感想お聞かせくださいね！ (2020年4月6日 16時) (レス) id: fcf1d7c074 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アババ | 作成日時：2020年2月16日 17時
