窪谷須くんの恋愛事情

４.第一印象 ページ5

「あり？転校生くんじゃないですか。」
そう言った私の声に反応して転校生、窪谷須 亜蓮がおもむろに顔をあげた。
あと何分かしたらチャイムが鳴るというのに彼は階段に腰掛けたまま動こうとしない。
「もうすぐ授業始まるよ？……まさかサボり？」
「まぁ、そんなとこ……」
歯切れ悪く答えた窪谷須くんに思わず顔をしかめる。
真面目そうな彼とサボりという言葉は結び付かず何か悩みでもあるのだろうかと少し疑問を感じた。
ストンと窪谷須くんの隣に腰を下ろし斜め上の宙を眺める。
「窪谷須くんって何か無理してる……」
「え、何で」
「違う？」
心に思ったことを言っただけなのだが図星だったみたいだ。
あんぐりと口を開けている窪谷須くんの顔に思わずフッと笑いが漏れる。
「深い理由は知らないけどホントの窪谷須くんのほうがいいんじゃない？」
もう少しだけ彼と話したい、そう思った。
クルクル変わる窪谷須くんの表情に惹き付けられるというか……。
いや、気のせいだ……多分。
こんな気持ちは初めてだな。

真面目そうなようで案外面白い。
これが彼の第一印象。

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