14.英姿颯爽 ページ15
「う、うわっ痛い……って、あれ？楠雄？」
待ち構えていた痛みが中々襲ってこなかったのでうっすらと片目を開きびっくりした。
あまりの出来事に情けない声を出した私に明らかにご立腹な楠雄がギロりとこちらを睨む。
ちょ、怖いよ、顔が！オーラが！悪霊退散！バルスッ！
(騒ぐな、やかましい……てかバルスって何だ)
今すぐ滅びないかなーって。さ、さーせん。
ハハハと苦笑いしながらなるべく目を合わせないように斜め上を見つめる。
あー、空が綺麗だなぁ〜。
無理やり現実逃避をする私に楠雄は分かりやすく舌打ちしながら(早く降りろよ……)と苛立ったように言ってくる。
お、降りる……？どこから…？
もしや、と恐々下を見下ろし絶句。はい。これお姫様だっこっすね。
「……ほんとごめん。今から死んでくる。」
(分かった。死体は森にでも埋めてやる)
うわっ、ガチだわ、この人。うせやん、仮にも幼馴染みやで？慈善の気持ちはないんかーい。
("仮にも"命の恩人にその言い方は何だ)
言い訳すらできない正論に「うっ」と言葉を詰まらせた。
はいはい。私が悪かったですー。
というか、降りろと言う割にはかなり強めに抱き締めてますよね、楠雄さん？
(………)
あ、ヤバい。と思ったが時すでに遅し。
ボンっと地面に叩きつけられるように落とされて腰からコンクリートにダイブした。
「っ………痛っ！もうババアなんだから、労れよ、コノヤロー！」
涙の浮かぶ瞳で楠雄を見上げると呆れるような、しかしどこか安堵したような顔をした楠雄と視線が合う。
その瞬間、言いたかった文句やらなんやらが吹っ飛んで、「ごめん」と素直な謝罪が口をついて出た。
なんやかんやで心配してくれてたのか。
(………………………た。)
照れて下を向いていた私に楠雄が何か言ったみたいだったが聞こえなかった。
「何か言った……？」
首を傾げながら聞き直すと楠雄はやれやれと私の前にしゃがみこみこちらの耳に顔を近付けてきた。
まるで内緒話をするように、
そんなことしなくてもテレパシーを使えばいいのに。
そう考えながらとりあえず耳を澄ませる。
が、何を思い立ったのか突然立ち上がった楠雄は何事も無かったかのように私に背を向けた。
え？何？
「Aちゃぁーん！大丈夫⁉……はぁ、はぁ、落ちていくのが見えたから……慌てて来たんだよー！」
「おい、大丈夫か⁉ったく、てめぇは___」
あぁ、これね。照橋さんと亜蓮が来たから言うのを止めたわけか。シャイボーイめ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 59人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
- このキョリ感…大好物です！ (2022年7月14日 23時) (
レス) @page22 id: 1a24521b43 (このIDを非表示/違反報告)
まるん - この話大好きです！更新大変だとは思いますが頑張ってください！ (2018年5月9日 21時) (レス) id: ec80cf7580 (このIDを非表示/違反報告)
みずたまり(プロフ) - ありがとうございます！私も付かず離れずの関係が好きです！ (2018年5月8日 18時) (レス) id: 44fc03fad4 (このIDを非表示/違反報告)
菊人形N - 窪谷須くんのこの距離感が好き〜（＾＾） (2018年5月7日 23時) (レス) id: 2c8433b584 (このIDを非表示/違反報告)
みずたまり(プロフ) - ありがとうございますー！窪谷須くん格好いいですよね！続きをなるべく早くお届けできるように頑張ります！ (2018年5月4日 21時) (レス) id: 44fc03fad4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みずたまり | 作成日時：2018年4月2日 17時
