気になる先輩 (ページ1)

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高校生活に慣れてきた5月。
私には、既に気になる人ができていた。

初めて食堂でお昼を食べた時、彼を見て一目惚れした
のだ。

彼の周りにいる数人の友人たちは視界に入らず、
私の目は彼だけを捉えて逸らすことができなかった。

整った綺麗な顔。

自分から進んで騒ぐタイプではなさそうだけれど、
友達と話している時には豪快に笑うところ。

片方の口角だけを上げて笑うのが特徴的で、
可愛いとかっこいいの両方を兼ね備えた完璧な人だと
思った。

色恋が大好物な友人のセナちゃんは
私が一目惚れをしたことに、瞬時に気がついたらしい。

「落ちた？」

『へ？』

「一目惚れ！したでしょ？あの人に」

『なっ、なんで分かるの！』

「だってA分かりやすいもん」

セナちゃんとは中学の頃から一緒で、
自分の恋愛は勿論、他人の恋愛にも全力で
まっすぐな女の子だ。

異性を意識し始める中学の頃、
楽しそうに話すセナちゃんの恋愛話を聞くのが結構
好きだった。

「あの人、先輩だよ。うちらの一個上の2年」

『...なんで知ってるの、まだ入学して1ヶ月なのに』

「かっこいいって有名だもん先輩」

そりゃあそうだよね。

だって本当にかっこいいもん。

かっこいいのに偶に見せるあの可愛い笑顔を目にした時
きっとほとんどの女の子は落ちるのだと思う。

「先輩の名前、教えてあげましょうか」

ただぼーっと先輩を見つめていれば、
突然私の目の前で得意げに仁王立ちをするセナちゃん。

『...知ってるの？』

「もっちろん」

とVサインを私に向けた。

『....教えてほしいです、セナさん』

「スタバ」

『是非とも買わせていただきます』

「ん、いいだろう！」

その先輩は、

＂川西拓実＂先輩と言うらしい。

名前までもかっこいい。

ついでに、

クラスは2年4組で、
川西先輩の左右にボディガードのようについているのが
同じく2年の佐藤先輩と河野先輩だという情報も頂いた。

『ありがとう、セナちゃん』

「大切な友達の為ですから」

セナちゃんに教えてもらった先輩の名前を、
心の中で繰り返す。

今まで恋愛をしたことのなかった私は、

気になる人の名前を知るだけで
こんなにも嬉しくて、ドキドキするものなのだと
知った。

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