幸せの魔導書【ブラクロ】 (ページ8)

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Aは人々の隙間からアスタ対戦の様子をみてみたが、一瞬で『あ、大丈夫だな』と思えた。

その勘の通りアスタは魔導書から剣を抜くと一瞬で方をつけた。

さて、とAが踵を返すと

｢きみ、俺と相手しない？｣

身なりからしていかにも貴族です、という感じの男性に声をかけられた。

『いいんですか…!!』

ぱぁあっとわかりやすく明るくなるA。

｢いいさいいさ。さあおいで
(ま、四葉とはいえこいつは強くなさそうだしな)｣

男性が歩く度にジャラジャラと装飾品の音がする。

二人で位置に着く。

｢では、始め！｣

係の人の合図で試合が始まる。

｢ほら、かかっておいでよ｣

『わ、私からやっていいのですか！』

Aは相手の出方によって決めるつもりだったため少しあたふたし始める。

周りから｢あの子戦い慣れてない感がすごい｣だとか｢やっぱり四葉でも貴族相手にはきついだろうな｣などと聞こえてくる。

『(なんの魔法から…やっぱりいきなり魔導書使うのは危ないし…)』

Aは考えた末、そのまま魔法を放った。

周りの空気の流れが変わり、相手に向かい風が吹く。その風は鋭く、当たっているだけでどんどんとかすり傷が出来てくる。

｢なんだあの魔法、風魔法か？｣

｢でもなんだか地味というか…｣

｢やっぱり下民は下民ね｣

『うぅ〜…(だって！致命傷とか与えちゃったらどうするの！)』

｢なんだ？その程度なのか？｣

対戦相手の男はかすり傷を少し擦って煽るようにAに話しかけてきた。

｢やはり、何も持っていない下民が四葉の魔導書を持っていたとしても宝の持ち腐れというか。豚に真珠とでも言うべきか｣

『…ぶ、豚!』

｢おっと、失礼｣

全然失礼そうにしていない男は｢次は俺の番」だ、と言わんばかりに魔導書を開いた。

｢四葉と言うから少しはいい仕立て訳になってくれると思ったが、やはり下民だな｣

男の周りから炎が上がってきた。
火属性らしい。

｢まああの下民のガキもただ運が良くて勝てただけだろう。どうせあのもう一人の四葉の下民も大したことないんだろうな。よくもまあこの試験を受ける気になったもんだ｣

『…』

｢さっさとおわらせて＿＿＿｣

男が火を放とうとしたとき、一気に周りの空気が凍りついたような、重苦しくなったような感覚に思わず周りの人達までが固まった。

『わかりました…さっさと終わらせますね』

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