【Fischer's】前途多難な恋だから ** モトキ

ベランダ * 02 ページ10

モトキ side


撮影後にマサイの家に。この前のAちゃんとの夕飯の件を詰めに詰められる。
よく約束を取り付けた、という意見からもっと積極的に行けるだろう、とうい意見まで。色々と質問攻めにも合い、答えていくなかで恥ずかしくなり体温が急上昇する。
そんな俺を見たマサイ達は面白がるように冷やかしにかかる。そんな空気から逃げたくて、"頭冷やす"とだけ言い残しベランダに逃げてきたのだ。

外の空気は冷たく、体温は一気に下がっていく。ふと隣のベランダを見ると窓から明かりが漏れていた。Aちゃんは家に居るらしい。会いたい、話したい。そんな気持ちが沸き上がってくる。
仕事は明日がいちばんのピークであろう彼女を、俺の一方的な感情で呼び出す事は出来ない。

ベランダにAちゃんが出てくる奇跡的な展開を願うが、漫画じゃあるまいしそんなこと。
そう思い諦めてたら部屋に入ろうと思ったそのときだった。

"ガラガラガラ"

ベランダの窓が空く。
そして出てきたのは少し大きめのパーカーを着たAちゃんだった。まさかの出来事に声を掛けられずにいると、あちらは俺には気づいておらずその場で伸びを始める。
胸元のジッパーが緩く止まっており、視線がそこに向かってしまうのは、悲しいかな男の性。

それにしてもまだ気づいてくれないなんて。
少し笑いそうになる。

「んーーーーっ、よし！頑張ろうっ」

そう言った時には笑いを我慢できず、声に出してしまった。Aちゃんが驚いた表情をみせたあと、恥ずかしかったのか、赤くなるのがわかった。

モ「こんばんは、Aちゃん」

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