【Fischer's】Hop Step Jump ** マサイ

画面の内側 ページ5

A side




動画では何回も見ていたんだ。
シルクくんが運動神経がいいのは知ってたし、モトキくんとぺけたんもアスレチックをばんばん進んでいくことも知っていた。
動画は面白おかしく出来上がっていたけど、実際目の前にすると、その難しさがひしひしと伝わってくる。

今朝早くから、"フィッシャーズ"の遠征にお供させてもらっている。数週間前に急に予定を聞かれたときはビックリしたし、本当に私が一緒に行って良いのか、何度も確認した。
結果、今に至る。さっきまでは皆が撮影をしていて、いつも動画で見ていた風景を画面の中から見ている不思議な気分だった。

さっきは確かシルクくんがここに足を掛けて・・・ぼんやりと記憶をたどり同じように足を運ぶ。

マ「おぉっ、Aちゃんの初アスレチックもクライマックス！果たしてクリアなるか！」

スマホの動画を撮りながらマサイくんが、少し離れたところからそう叫ぶ。
個人用だと言って先程からカメラを構えるマサイくんだが、私として初めてでへなちょこな姿は残して欲しくない。

「もう！録らないでくださいっ！！」

そう叫べば回りのメンバーからヤジが飛ぶ。

ペ「また機会あったら一緒にアスレチックきてさ、その度に撮影して成長追おうよ」

モ「おっ、それナイス、ぺけ！今日は記念すべき1回目ー！」

どうやら私に味方は居ないらしい。
仕方ない、恥ずかしい姿を晒す事になるの必須だが、諦めてあちら側に飛び移るしかない。
目的の箇所を確認する。そんなには遠くない、きっと飛べる。"よしっ"と踏み込むために足に力を入れた、その瞬間。体が傾く感覚に。
元々ギリギリの所に足を掛けていたこともあり、力が入った瞬間に踏み外し、飛ぶ事なく、踏み外した方に体が倒れていく。

「きゃっ」

反射的に小さく声が上がる。

マ「Aちゃんっ！！」

"倒れる"そう思った瞬間に、シルクくんに抱き留められた。

シ「おっと。だいじょーぶ？」

腰に回る腕、思いの外近い顔。
恥ずかしさに顔に熱が上がっていく。

「わっ、ご、ごめんなさい！！大丈夫ですっ」

どうして良いのかわからず、ばっと下を向くと。

モ「シルクー、離れろー！隣からすっげぇ殺意放ってるから」

そう笑うモトキくんの方を見ると、明らかにぶすっとしたマサイくんが。"Aちゃん"と片手で招かれ、解かれた腕からそちらに向かえば、片手で抱き締められる。

マ「お れ の！」

シ「ふふっ、取らねぇよ」

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