【Fischer's】前途多難な恋だから * モトキ

距離 * 02 ページ14

モトキくんはマサイくんの家に、私は自分の家に。方向が同じだけなのに"一緒に帰ろう"なんて言われると、まるで同棲か何かしてるようで、恥ずかしくなってくる。
熱を誤魔化すべく、モトキくんに話しかけた。

「モトキくんって優しいよね！」

モ「そう？普通だと思うけど」

「だって初めて会ったときも。自分で言うのも何だけど、見ず知らずの人をお家に入れるなんて」

モ「あれは・・・Aちゃんだったからかなー。泣いてたみたいだしほっとけなかったからかな」

流石イケメン担当！そんな台詞をすらっと言えちゃうの！？
誤魔化すはずだった熱が一気に戻ってきて余計に顔が熱い。自分の免疫のなさが情けなくなる。わかってはいる、モトキくんは特に意識して言ってる訳じゃない事なんて。それでも照れちゃうのはきっと私がモトキくんの笑顔に弱いから。そして、また誤魔化そうとしてつい余計な事まで話してしまう。

　「あの日は実は彼氏に降られてさ、ははっ」
モ「え？」

　「彼氏の浮気現場に遭遇しちゃってさ、"面倒になった"とか"終わる予定だった"とかって云言われて、その場で降られちゃったんだよね、笑っちゃうよね、あはは。
樹里・・・えっと親友に相談して、終電逃しそうになって、鍵落として、あの状態になってたの」

苦笑いで話す私に、モトキくんが"辛かったね"と声を掛けてくれた。
実際あのときはすごく辛かったけど、樹里とモトキくんとマサイくんが助けてくれたから。そう思うと心がほんわり温かくなった。

モ「・・・まだ元カレの事・・・好き？」

心配そうに話しかけてくる。
あの時までは確かに好きだった、わりと、少し、嫌じゃないかも、好きかもって。でも今は。

　「ううん、今はもう全く！！これも樹里とモトキくん達のおかげだよ！本当にありがとう！」
モ「・・・良かった。いやー、爆弾踏んだかと思って焦ったー」

集まった熱は少しずつ治まっていく。
ばれずにすんだだろうか。

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