アールグレイ15 ページ44
your side
何が起きたか すぐには分からなかった。
鼻腔を擽る あの香りだけが私を現実世界へと引き戻す。
じわりと熱い体温を感じる。 体に響く鼓動を感じる。余り変わらない背丈のせいで 彼の顔は私の真横にあり息がくすぐったい。
｢.....ねぇ｣
不意に 耳元で呟く彼の声は少し震えていて状況と相まって緊張が増していく。
｢話したいことがあるんだけど。いろいろと。｣
まるでデジャブかのようにあの日と同じ言葉を繰り返した彼に、同じくあの日と同じ言葉を返し 私たちの全てが詰まっているあの公園へ向かった。
祭囃子が微かに届くこの公園は花火が見える場所でもないし大通りから外れているため いつも通り人はいなかった。2人きり。公園までの道のりはカランコロンと下駄の音が響くばかりであった。
公園に着いてベンチに座って暫く沈黙が流れて。あの、って2人とも被って。それがおかしくて少し笑って。彼は徐に言葉を発した。
｢.....あのさ。言いたい事の前に、話しておこうかなって思う話が一つあって。聞いてくれる？｣
もちろん、と頷くと少し困った表情でわらって彼は深呼吸を1つした。
｢前、ここで僕が話したこと覚えてる？｣
『うん。』
｢覚えてるんだ｣
『.....忘れたフリした方がいいのかなって。』
｢.....うん。その時はそっちの方が有難かった。｣
『.....なんで猫かぶりしているの。』
｢ふふ、そう。それ。.....気づいていると思うけど。僕の大事だった人が言った言葉だったんだ。｣
.....何となく。想像出来てきたけれど実際に言われると少し心にくる。
｢あの子はさ、僕の初めての彼女で。それでいて意地悪で。｣
思い出すようにぽつり、ぽつりと言葉を紡ぐ。
私はその一言一言を漏らさないよう耳を傾けていた。
｢喫煙室であった時に言った六情と六根も、彼女に教わったことなんだ。｣
『そうだったんですね』
｢うん。..これがまた厄介でね。 簡単に説明すると、感覚と感情は繋がっているってことで。｣
例えばつらいとからい にがいとくるしいが同じ漢字で表されることね と言われ少しだけ納得する。
｢.....彼女が着けていた香水も雨の日の匂いも夏の匂いも.....花でさえも。全てに彼女との記憶が結びついてきて。ずっとずっとまとわりついて過去に縋って前に進めなくて。｣
そこまで言って私の方を向いた彼はふわりと笑った。
その表情は今まで見た事のない
自意識過剰かもしれないけれど。
愛に満ちた目をしていた。
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やまだ はなこ(プロフ) - Komeさん» ご指摘ありがとうございます！お恥ずかしい！！直しました、、 (2020年10月30日 8時) (
レス) id: 42b7c3a68c (このIDを非表示/違反報告)
Kome - 細かいですがprologueですよ。面白いです。 (2020年10月30日 6時) (レス) id: 86c7210f95 (このIDを非表示/違反報告)
やまだ はなこ(プロフ) - 大木さん» 読んでいただきありがとうございます！紅茶王子知ってる方に出会えて嬉しいです！構想練ってみます！ありがとうございます！ (2020年10月28日 15時) (レス) id: 42b7c3a68c (このIDを非表示/違反報告)
大木(プロフ) - とても面白かったです。紅茶が好きで、わかるなぁとおもいなから拝読させていただきました。紅茶王子パロをもし作成されるならそちらも是非読みたいなと思います。 (2020年10月26日 21時) (レス) id: cd0c7018a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やまだはなこ | 作成日時：2020年6月12日 21時
