あの夏が飽和する。【轟焦凍】 (ページ7)

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電車には乗らなかった

フードで顔を隠せばいいと俺は提案したが、首を降られる

「駅は人が多いし、防犯カメラも目じゃ数えられないほどある
誰に見られてるかわからないから、なるべく路地裏を歩いた方がいい」

Aはそう説明し、路地裏へと入る

個性で飛んでいけたらどんなに楽だろうと思ったが、あいにく俺の個性は空を飛べる訳じゃない
Aにも無理だった

「轟」

名前を呼ばれ、腕で止められる

どうしたのかと聞けば「防犯カメラがある」と答えた
よく気づけたものだと感心した

カメラを壊せるかと聞かれたので、氷で凍らす

「そのうち水になってデータは飛ぶと思うぞ」

「ナイス」

見るからに古そうだったので、きっと水に対応する機能はついていないだろう

そうやって俺らは防犯カメラにきをくばりながらなんとか二つほど離れた町までやって来た

「こそこそするのもあれだし、変装しようか」

Aはマスクをつけて、どこかへいってしまった

俺は路地裏のブロックに腰を下ろし、どこから来たのかわからない猫と戯れた

三毛猫を見て、探偵と犯罪者みたいだなと思ってしまう

同じようなものだった

Aのあの泣き顔を思い出した

後悔か、恐怖か

始めてみたクラスメイトの涙に、俺はどうしたらいいのかわからなかった

今も同じではないだろうか

人殺しであるあいつとの距離感がわからない

それでも、一緒にいたいと願ったのは自分だった

俺はそっと目を閉じる

いつか俺ら二人が無実になる日は来るのだろうか